今回読んだのは精神科医の香山リカさんの「『むくわれない生き方』を変える本」です。
自分の人生がむくわれないと感じている人に向けての本です。
香山さん自身もむくわれないと感じていた時期があるそうです。
私も自分の人生がむくわれていたとは思えていません。
でも,こうした感じ方は日常をつまらなくします。
乗り越えた方がよい感情です。
本を読んで思ったことをいくつか述べていきます。
むくわれない心理はどこからやってくるのか。
香山さんがいうには,他人の存在が引き起こすとのことでした。
とはいっても,他人があなたに直接何かをするわけではありません。
他人の存在がむくわれないという気持ちを生じさせるのです。
つまりは比較です。
他人と自分を比較することで,むくわれないという気持ちが起きるのです。
あの人より自分は努力をしている。
あの人は自分よりいい環境に生きている。
それなのに,あの人は自分より富や地位を得ている。
自分はむくわれない。
こういう感情です。
不公平感ほど,人間の感情をゆさぶるものはありません。
なので,いつまでも心の奥底にこの感情はいつづけます。
他人が存在しなければ,同じ環境,同じ状況であってもこんな気持ちにはなりません。
なるほど,むくわれなさに対する本質的な指摘だと思いました。
では,むくわれなさにとらわれないためにどうすればよいのでしょうか。
一つは現在の努力を将来の見返りに結び付けないことです。
かさじぞうのおじいさんのですね。
別にお礼がほしくてかさを被せたわけではありません。
現在の生き方に没入すること。
やっていて満足できる日々を送ること。
こういうことが大切になるのだろうと思います。
歴史上むくわれなかった人はたくさんいます。
生前絵が一枚しか売れなかったゴッホもその一人でしょう。
暗殺された坂本龍馬もそうです。
彼らの人生はむくわれなかったのか。
誰にも分かりません。
そうした人を考えるとむくわれるという概念がゆらいできます。
そんなことにとらわれずに生きる方が大切と思います。
香山さんは施設にランドセルを贈ったタイガーマスク運動を例に挙げます。
この運動は,感謝されたとしても自分が社会的に認められることはない運動です。
しかし,伊達直人としてプレゼントをした人は幸福を感じたはずです。
ここにむくわれなさはありません。
誰かを幸せにする行動には,むくわれるむくわれないという観点が存在しないのです。
香山さんはそれでもむくわれないと感じる人のために,具体的なアドバイスをいくつかしています。
目の前に自分が現れたらどう声を掛けるか。
寝るとき「今日もいい一日だった」とつぶやく。
ふと空を見上げてる。
このようなものです。
自分に合った方法を選び,それで気分転換を図れればいいと思いました。
むくわれた,むくわれないと感じることそのものが,あまり心の健康によくない。
読後,そう感じました。
自分の満足を追究することが,平穏や幸福につながるのだなあとつくづく思いました。