興味を引くタイトルの本を読みました。
「『1日30秒』でできる新しい自分の作り方」というタイトルです。
著者は,田中ウルヴェ京さん。
ソウル・オリンピック,シンクロナイズド・スイミングの銅メダリスト。
立派な実績ですが,そのことがストレスにつながったとか。
そうなんです。
この本は,ストレスによる嫌な気持ちから自分を救う本なのです。
タイトルが広すぎてジャンルが分かりにくいのですが,ストレスへの心理学的対応について述べられています。
読んで印象に残ったことを述べていきます。
さて,不安や緊張は自分がそうなりたいと思っていると筆者は述べます。
不安や緊張を呼び起こす心理的過程は,4つのサイクルから起きます。
そのサイクルとは,4つのサイクルは刺激,評価,そして感情と身体です。
つまり,刺激を受けたらそれに対して評価を行い,その評価によって感情と身体が反応するという過程です。
サイクルという用語を使っていますが,最初に戻るわけではありません。
評価によって生じた反応が,感情と身体を作用し合いここがサイクルのようになっているのです。
さて,このサイクルのどこをコントロールすると,ストレスや不安から逃れることができるのでしょうか。
筆者は,感情のコントロールには評価が一番大事と述べます。
刺激は,外から入ってくるものなので,完全にコントロールできるものではありません。
反応し始めた感情と身体をコントロールするのは,できなくはありませんが困難が伴います。
なので,刺激を評価する,ここをコントロールするのです。
評価というと難しいですが,外部からの刺激の受け取り方をコントロールするのです。
さて,どのようにするかを考えていきます。
感情のコントロールすることをコーピングと呼ぶそうです。
コープという英単語は,対処するということを意味します。
このコーピングの方法を3つ紹介しています。
「言葉を使う」「心理調整術を使う」「体を使う」です。
順番に説明をします。
「言葉を使う」は具体的には,自分への語り掛けです。
簡単にいうと,独り言です。
自分自身への励ましや暗示でもあります。
自分への信頼を高め,目の前の課題に集中できるような言葉掛けをする。
それが大切なのです。
二つ目の「心理調整術」は,緊張する場面を前にして行うものではありません。
普段から行っていることで,心を安定させるものです。
12個紹介されているのですが,印象深かったものを一つ紹介します。
それは,「他人をほめる」という方法です。
自分ではなく他人です。
他人をほめることで,気持ちが明るくなり,結果的に心が健全になっていくのだそうです。
これおもしろいですね。
ぜひ,やってみたいと思います。
三つ目の「体を使う」は,体を使った気分転換のようなものです。
13こ紹介されていました。
呼吸で整えるものも多かったのですが,印象に残ったのは,「中心軸なおしトレーニング」でした。
湯上がりに鏡で体を見てゆがみを認識する。ゆっくりと背伸びやつま先たちなどの行い,左右のバランスを整えていくというものです。
心というより体の健康のようですが,リラックスできるようになり心にゆとりが出てくるのだということでした。
取り組んでみようかなという気持ちになりました。
これらのコーピングは,認知行動療法の系統に入るのだそうです。
認知のゆがみを心のゆがみとのことで,そこを適切にすることがストレスに強い自分を作ることにつながるのだということでした。
心のあり方ですから,万人に必ず効くということではないと思いますが,取り入れてみようという気持ちになりました。
さて,筆者はメダリストだったのですが,しだいに世間に忘れ去られていくことで自分に自信をなくしストレスを強く持ったのだそうです。
また,アメリカで心理学を学んで帰国しても注目を集められたかったとのこと。
そういう経験を踏まえてのコーピングですから,机上の理論だけというわけではないようです。
このことは後書きに書いてあったのですが,なるほど取り入れてみようという気持ちになるわけだと思いました。