1 本書の概要
心理学の自己啓発本です。
本書の要点はただ1つ。
心を自分でコントロールするということです。
心は脳の電気回路。
追い詰められてどうしようもなくなった時でも、冷静に対処すれば大丈夫。
そういう本です。
2 徹底した自己認識
どんな場合でも、まず自分の心の動きを見つめます。
このことが心の容量を増やすことにつながるのです。
今、どんな感情が起きているのか。
それは、心をどちらに導いていこうとしているのか。
このような感情を引き起こしたものは何か。
そうすることで、感情の赴くままに行動するのではなく、感情をコントロールするのです。
元々感情というものは、冷静に考えているうちに他の獣におそわれたりしないように簡便的に行動を起こしたり、非常事態に怒りとともに火事場の馬鹿力を引き出したり、という命を守るための心の動きでもあります。
その一方で、簡便的であるために、誤った行動につながる可能性も残っています。
現代社会では、そうそう命の危険におそわれることがありませんから、簡便さよりも冷静さが価値をもっています。
だからこそ感情にまかせず、感情を見つめる必要があるのです。
いわゆるモニタリング。
自己認識をいつでも行うことができる態度を獲得することが大切なのです。
3 心の容量とは
筆者は、心に箱を持てといいます。
それらの箱に思考や感情を整理していれていく。
自分にとって整った常態にする。
こうすることで、心の容量が増えるといいます。
確かに、ストレスを感じている時は、心がもういっぱいになっています。
新しいものを受け入れる余裕がなくなっています。
もしかすると、すき間があるのかもしれませんが、それに気づくことができなくなっています。
箱というのは、一つのイメージでしょうが、整理しておくことで心に余裕ができることは確かでしょう。
これを繰り返すことで容量は大きくなっていきます。
4 総評
心は複雑で不合理な仕組みをしています。
それは、様々な危機に簡便的に対応するためだったのでしょう。
簡便が組み合わさることで複雑になったのは皮肉ですが、こういう矛盾はよくあることです。
これに対応するために、自分の心を見つめ、心を客体としてとらえる。
そして心をコントロールする。
こういうことを筆者は主張しているのだと思います。
確かに、心をそのようにコントロールできたら、かなりにストレスが軽くなるでしょう。
しかしながら、そう簡単にコントロールできないのが心。
本書にも様々な手法が紹介されていますが、今日聞いて明日できる、というものではないようです。
訓練が必要だと思います。
しかし、こうしてみると、心の迷いを取り除くために心理学を活用したら、宗教の修行に近いものになりました。
という何だか見たことある風景にたどり着いたような気がします。
とはいえ、本書には心の容量を増やすための様々な提案が載っています。
その中のどれかを実践してみること。
心の悩みがある人にとって、それは助けにつながるものだと思います。