1 本書の概要
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サイコパスは映画「羊たちの沈黙」で有名になったのではないでしょうか。
高い知能の持ち冷静におそろしい犯罪を行うことができる人。
こんなイメージだと思います。
脳科学の進歩により、サイコパスの具体が明らかになってきました。
本書で紹介されていることの中で、印象に残ったことを述べていきます。
2 サイコパスとは
サイコパスは知能が高いという印象をお持ちの方が多いでしょう。
目立つサイコパスにそういう人が多いので、そう思われがちです。
実際には、知能とサイコパスに関連はないのだそうです。
つまり、頭のよくないサイコパスもいるそうです。
では、サイコパスの特徴は何か?
それは、共感性の乏しさです。
他人に情緒的に共感することが少ない、またはないのです。
これは感情がわからないということではありません。
逆に相手がどんな感情をいだいているかを理解する能力に長けています。
しかし共感はしない、もっというと同情なんかまったくしないのです。
そして、不安を感じることなく冷静です。
犯罪をおかす際に緊張するということはありません。
そして、一般的な倫理とは別の倫理をもっています。
端的にいえば、自分の損得が最優先です。
他人は利用するもの、恩を返すという発想がありません。
サイコパスは、こういう人間です。
3 サイコパスは治るのか
サイコパスは、脳の扁桃体の活動が低いことがわかってきました。
扁桃体は感情・情動に関係する部位です。
快・不快、恐怖などの情動を決めるところです。
ここが弱いために、冷静で不安を感じにくいのでしょう。
前頭前皮質は、さまざまな衝動にブレーキをかけるところ。
犯罪的行為を躊躇なく行うのは、こういうところが要因になっていると考えられます。
では、そういう特徴のあるサイコパスを治療することはできるのでしょうか。
医学的には難しいというのが現状です。
心理学的な療法ではどうでしょう。
精神分析学や来談者中心法では効果がないことがわかってきました。
グループセラピーなどは逆に危険です。
サイコパスは話が上手、プレゼン能力が高いのです。
その能力にグループの話し合いがあらぬ方向に引っ張られてしまい、本来の目的を見失ってしまうことが多くのだそうです。
また、損得を考えて反省した(ふり)方がよい、同情した(ふり)方がよい、ということをいち早く学習してしまうので、療法が効果をあげていないのに、あったかのように誤認させることが多いそうです。
それでも、認知行動療法を用いて行動の変化を導くことができるのだそうです。
そして罰よりもほうびの方が行動を変えやすい。
こういうことがわかってきました。
今後の進展に期待しますが、サイコパスの行動に評価が難しい、自分の偽ったり他人に取り入ったりすることが上手なので、ことから近所の心療内科で治療できるものではないそうです。
4 サイコパス対処法
もし、隣人にサイコパスがいることがわかったら、近づかないのが一番です。
どんなに魅力的でも、相手はあなたを利用しようとしているだけだからです。
特に、他人を助けてあげようという気持ちが強い人は危険です。
振り回されてしまうからです。
まずは、100人に1人は「反省できない人」「罰をおそれない人」がいるという現実を認識することです。
そういう人だとわかって、適切な距離感で関係するのがよいでしょう。
自分がサイコパスであったら。
自分に向いた職場を探すことです。
不安におしつぶされることなく冷静に行動しなくてはいけない現場。
そういうところに向いています。
決して、人と関わる、特にケアをするというような仕事についてはいけません。
自分も他人も不幸になります。
自分の特性を知ることが大切になります。
5 総評
「話せばわかる」
と板垣退助は言ってないという説もありますが、人間だれとでも分かり合えると信じたいものです。
しかし、医学的にはそうではないことがわかってきました。
このような人間がいることは、実は多くの社会で経験的にわかっていたのですが、宗教・思想その他の観点的な人間理解で、見失っていたということはあったと思います。
サイコパスだからよくない、というわけではありません。
その特性にあった生活をすればよいのです。
サイコパスがいることを知ることは、人間理解の幅を広げてくれるのかもしれません。