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「恋する寄生虫」と自由意志

 自分の意志は,ほんとうに自分のものか。
 そんな,どこか哲学的なことを考えさせられる小説があります。
 三秋 縋さんの「恋する寄生虫」です。
 とても気に入った小説です。
 今回は,このことについてお話します。
 作品のテーマについての感想を話し,具体的な場面にはふれないようにします。
 「テーマについても前もって知りたくない」という方は,お控えください。

 

1 「恋する寄生虫」との出会い

 うろ覚えなのですが,キンドルの「お客様へのおすすめ」の1冊だったと思います。
 寄生虫博士の藤田先生が同名の本を出していて,読んだことがありました。
 目黒の寄生虫館に行ったこともあります。
 それで興味を持ちました。
 内容に詳しくふれませんが,とてもおもしろかったです。
 恋愛小説の枠に収まりきれず,人生や意志について考えました。
 書店に平積みされているのを最近見つけました。
 どうやら映画化されるようです。
 好きな物語の映像化は,微妙な作品が多かっただけに心配です。
 でも,登場人物がどう描かれるのか興味があります。
 機会があれば見たいと思います。

2 自分の意志はほんとうに自分のもの?

 この小説で特に考えたことは,自由意志についてです。
 ある人を好きになった時,それはほんとうに自分の気持ちなのか。
 誰かや何かに操られているのではないか。
 操られることを拒否した時に,好きという気持ちを押さえることができるのか。
 などなどです。
 難しいですね。
 感情に理性が勝てるのか,という問題でもあります。
 感情に従った方が,心地よく暮らせるようにも思います。
 理性に従ったからといって,幸せになるとは限りません。
 人生の幸福をどうとらえるか,ということまで考えさせられます。
 操られていると知りつつ,それを受け入れた場合はどうでしょう。
 それを自由意志とはいえない,といえるでしょうか。
 そんな難しいこと考えたこともない。
 少なくとも私はそうでした。
 登場人物に突きつけられるこれらの問題は,読者の心にも響いてきます。
 そういえば,お金があることよりも,他人からよい評価をもらうよりも,自分で自分の生き方を決めることに人間は幸せを感じる,と聞いたことがあります。

3 幸福な人生

 三秋さんの小説は,幸せを題材としているものがいくつかあります。
 よくできたおもしろい小説ばかりなのですが,読後ちょっと考えさせられることが多いです。
 普段,自分の人生についてあまり考えていないからかも知れません。
 そんな難しいこと,どうでもいいよ。こんがらがってきたよ。
 という方もいるでしょう。
 でも,純粋に小説としておもしろいですから,興味を持たれたらぜひお読みください。
 自信を持っておすすめします。