1 破綻できない片思い
片思いはつらいですね。
ローティーンの甘い思い出です。
片思いは往々にして成就しません。
破綻します。
それは悲しいしつらいことです。
しかし,破綻することで次に進むことができます。
ある種,破綻は救いでもあります。
けれども,世の中には破綻できない組み合わせがあるのです。
今回は,そのことについて話します。
2 親子関係の片思い
破綻できない片思いというのは,親子の間で起きます。
往々にして,子は親になつきたがります。
もちろん,思春期前,幼児の頃に顕著です。
第二反抗期の前ですね。
このころに安定した親子関係が築けないと愛着障害が起きるとの調査結果があります。
さて多くの場合,両思いになるのですが,親が拒否する場合に片思いになります。
子をどうしても受け入れることができない。
こういうことがまれに起こるのです。
悲劇ですね。
でも,起こらないわけではないんです。
3 親の感情
なぜ,自分の子を受け入れられないのか。
母性本能がある母親でこのようなケースが起きるのはなぜか。
もちろん,受け入れるべきであるという硬直論を展開するつもりはありません。
この現象はほんとうに恋愛の片思いと似ています。
原因は不明確です。
ふられる理由なんて,特に若いころは,あってないようなものです。
生理的に無理。
ひどい言葉ですが,一面の真理を表しています。
そして,似ているところがもう一つ。
原因を追及しても生産的ではないのです。
分かったから何?
原因を取り除いたので,両思いになります。
こんなことは,めったにおきません。
破綻は破綻なのです。
さて,子に対してばかりでなく人とかかわることが苦手な人はいます。
人とかかわることがストレスになる人です。
これは人によって濃淡があります。
まさにスペクトラム。
そして,極度にこの種のストレスを感じやすい人が子を受け入れられないのです。
仕方ないですね。
4 子の感情
前項のような親が必ず破綻するとは限りません。
子の感情の濃淡も関係するからです。
子がそれほど親の愛情を必要としない場合があります。
そういう場合は親がストレスフルな場合でも問題が起きません。
淡い親子関係が双方にとって快適だからです。
似た者親子とでも申しましょうか。
決して不幸な関係ではないのです。
でも,そうでない場合はどうなるでしょう。
子は親に愛されたく,親は子を遠ざけたい。
破綻しかありません。
しかし,親子です。
破綻はできません。
壊れた状態が継続します。
何年にも渡って。
悲劇としかいいようがありません。
5 親の代行者
親という者は,そうそう代理できるものではありません。
ある種,唯一のものだからです。
しかしながら,生みの親より育ての親。
そういう親の代わりとなる者ができる場合もあります。
先の破綻した関係で,親の代行者がいた場合,悲劇は避けられるでしょう。
一人の親が難しくとも,もう一人の親がそれを補っている。
両親がだめでも,祖父母が代行している。
おじおばが役割を担っている。
年の離れた兄・姉が優しい。
そういう時は,問題が大きくなりません。
寝食をともにする方でそういう方がいれば次善です。
それがいなかった時は,やはり悲劇です。
6 愛着障害の子ども
愛着障害の子は,一見するとADHDに似ています。
他への攻撃性が高く,協調性が薄い。
ルールの意義を認めず,自分本位の行動をする。
自己評価が低い。
しかし,外に表れる状態が似ているだけです。
根本はまったく異なります。
ですから,コンサータ等が処方されたとしても改善はしません。
この子らは,自分が不当に扱われているのだから,自分も相手を不当に扱ってよい。
そう思っているのです。
このようなことを口にするわけではありません。
そこまで明確に認識できてはいないのです。
しかし,自分の不当性に対する反逆心はもっています。
こういう子は,他人とトラブルになりがちです。
そしてトラブルの解決は親にもちこまれます。
トラブルは解決しても,親子関係は解決しません。
悪化する方が普通です。
悲劇です。
7 解決策は
福祉関係のサポート体制とか,ステークホルダーで会議をもつとか,いろいろな対策はとられます。
しかし,決定的な解決策はとれません。
なにせ片思いです。
悲しいですが破綻させることが唯一の決着なのです。
破綻が永続的に続く。
やはり,これを悲劇といわずにしてなんといえばよいのでしょう。
世の虐待事件には,こういう一面もあると思います。