1 本書の概要
いつも一文で書籍の概要を書いているのですが、本書にそれは必要ありません。
タイトルがそのまんま。
米国債投資本です。
実はずいぶん前に読んでいた本でして、取り上げるのが遅くなりました。
それで旬が過ぎている感じはするのです。
まだ高いのですが、米国債の利回りが4%を超えていました。
2023年から2024年にかけて。
その時期、富裕層の投資先として米国債が注目されていたのです。
それで出版されたという面を大きかったと思います。
ご存じの通り、米国はインフレ退治を終えて利下げ基調になり、米国債の利率は下がるでしょう。
旬が過ぎているというのはそういう意味ですが、本書、刺激的なタイトルとは違って、オーソドックスな債券投資解説となっています。
王道過ぎてあんまりおもしろみはなかったんですけど、債券投資に興味あるちょっとした小金持ちにはいい参考書になっています。
2 債券投資は金持ちの投資
いやまあ、米国債は100ドルから買えるのですよ。
だからまあ金持ちじゃなくとも投資はできるのですね。
ですが、債券って大きく財産を膨らませるものじゃないんですよ。
本質は金を貸して利子を取っているので、利子分しか儲からないのです。
つまり、複利で再投資をするようなタイプの利殖じゃないということです。
株との大きな違いはそこ。
大事な点は2つ。
1つは、確実に元本が返る可能性が高いということ。
倒産・破綻しなければ返ってきます。
倒産したら返ってこないのは株も同じですけどね。
もう1つは買った時点で利回りが確定しているということ。
途中で売却しなければ、決まった額が手に入ります。
正に借金証書。
こういう特性から見ると、どういう投資が向いているかは明らかです。
つまり、大きな金額を投資できる人が有利。
そして、財産を増やすよりも守りたい人に向いている。
つまりは、美濃取った後の信長といいますか、もう挑戦しなくともよい金持ち向けの商品なのです。
3 なぜ米国債なのか
もう本書の説明でも書評でもなくなっている感じがしますが、ここまで分かるとなんで米国のものを買うのかって疑問になりませんか。
そうなんですよ。
外国のものを買うということは為替の問題を抱えることになるので、1つ悪条件が増えるのです。
安定した利子がほしいだけならば為替差損は避けたいでしょう。
実際、日本の定期預金金利が高かった時代に米国債をわざわざ買おうとする個人はいませんでした。
手続きが煩瑣とか手数料が高かったとかそういうのは本質的じゃないです。
安定した利子がほしいだけで、それがもっと簡単に手にできるのであればいらないんですね。
つまりは0.1%などという超低金利でやってられんから、米国債を買うのです。
世界で一番安定した金融商品だから。
それはウソじゃないですけど、機関投資家などが気にすることです。
日本の銀行の利子が4%あったら誰も買わないと思います。
結局、第2候補というかスペアというか滑り止めというか、そういう感じなんです。
4 評価
★★★★☆
4つです。
本書は良書です。
個人購入を考えてる方に債券のABCを分かりやすく解説してます。
今後、米国債の利回りが下がって実用に供さなくなったとしても、債券投資の教科書的存在になれる本です。
それに、2色刷りで読みやすいしね。
KADOKAWAがんばったなあ、重版だそうでおめでとうございます。
それで、債券投資なんですが、おそらく今話題のNISA購入層とは別ですね。
いやNISAも買える人たちでしょうけど、最短で1800万埋められる人たちが買うものですよ、これは。
不動産と違って、銀行から融資受けて買うものでもありませんし。
ということはですよ。
本書が役立つ読者は少ないはずなんです。
でも、売れているんですよ本書。
数千万を動かせる中高年がけっこういる国なのかもしれませんね。
日本って国は。