1 投げにくい場所でのキャスト
ルアー・フィッシィングにおいてキャストは重要です。
ルアー・フィッシィングは投げる・巻くの繰り返しですので、釣りの半分を占める動作だからです。
この投げるをキャストとかキャスティングとかと英語で言ってるんですが、本当にいろいろな投げ方があります。
そんな投げ方ほんとに必要なの?
というものもあるんですけど、たいていは実用向きなんです。
それで、タイトルの投げ方になるんですが、フリップキャストとスパイラルキャストはトリックキャスト(曲芸じみた投げ方)の代表みたいな感じで扱われます。
でも、ですね。
この2つが必要な場面があるんです。
2 頭上や背後に障害物がある時のキャスト
左右や頭上、そして背後に障害物がある場合、つまり使える空間が自分の前方しかない場合、できるキャストは限られます。
それが、フリップキャストとスパイラルキャストです。
どういうシチュエーション?
と思われる方、こんな感じの場合です。
頭の上に樹木があって背後が崖とかススキ。
左右もススキとか丈の高い草が生えている。
こんな場所です。
藪をこいで水際まで行った時とか、けっこう出くわします。
竿を振る空間がほとんどないと思ってください。
そんな状況です。
池・沼・渓流でよくあるんですよね。
ここでどうやって竿を振るかといいますとこんな感じになります。
3 ロッドの動かし方
最初にルアーキャストの原理を説明します。
竿を飛ばす方向と反対向きにしならせます。
後ろ向きに振って、後ろにしならせるんですね。
当然、竿は元に戻ろうとする力・反発力が生じます。
それを使いながら前方に振る。
そうすると遠くまで飛ぶようになります。
竿の反発力を使うわけです。
これはルアーとかフライだからできる投げ方で、エサでは難しい方法です。
やるとエサがちぎれて後ろに飛んでいくことが多いですからね。
針に取れやすいものを付けてる時は無理なんです。
まあ固いエサのときは可能な場合もありますけど、あえてやることはないです。
閑話休題。
ルアーをキャストする時は、投げる方向と逆に竿をしならせることが必要になります。
それでフリップキャストですが、これは下側、つまり地面側にロッドをしならせます。
地面に振ると自分側にルアーがきます。
これを前方に振り直して飛ばすわけです。
頭の上でやるオーバーヘッドキャストを180度反転した形です。
とはいえ、ただ下に振っても十分な反発力は得られません。
なので下に降る前に上に振って反発力をためます。
それから下に振るのです。
上に振って、下に振って、上に振りながら投げる。
こんな感じです。
要は回数重ねて力を溜めている感じです。
対してスパイラルキャストは遠心力を使います。
ルアーを体の前で回転させるんです。
重りにヒモをつけて振り回すと遠心力が生じますね。
それを体の前方でするんです。
くるくる何回も回すことはせず、1度回したら投げる。
そんな感じのキャストです。
どちらも、せまい空間を使ってなんとか反発力を作りだそうとしている。
そういう涙ぐましいキャストです。
というわけで狭い場所でもキャストはできるのですが、問題がなくなったわけではないのです。
4 両者それぞれの欠点
欠点といいますか、短所といいますか、それぞれ実用上の課題があります。
まずはフリップキャストです。
これ手首への負担がハンパないです。
1回2回ならいいですけど、何十回もやると手首がおかしくなってきます。
やわらかめの竿で重いルアーの時はまだいいんですが、固めで軽めの時は最悪。
続けられません。
その点、スパイラルキャストは手首にやさしい。
何より、両手で投げられますからね。
しかしコントロールがシビアになります。
フリップキャストはルアーが直線運動をするので、そんなとんでもない方向に飛ぶことはまずないです。
しかしスパイラルキャストは円運動ですから、投げるタイミング狂うと右や左に飛んでいきます。
円運動の最後を直線に近づけるという練習をするしかないんですが、まあ実釣の時は100%成功するとも限りません。
どちらを選ぶかは釣り人によるんですが、わたしはスパイラルキャストを使います。
手首が弱いので。
5 第3のキャスト
課題のない、もっといいキャストはないの?
と考えられた方も多いでしょう。
あります。
というか最も多くの釣り人がしている方法はフリップキャストでもスパイラルキャストでもありません。
ピッチングです。
これはアンダーハンドキャストの変形です。
違いは、片手にルアーを持つということ。
片手にルアーを持ち、ロッドを振り上げるように振った際にルアーを放す。
そういう投げ方、というか送り込み方です。
送り込みですからコントロールは抜群だし、簡単。
なので非常に多くの方が使ってます。
ただですね。
想像できると思いますが、送り込みなので飛距離が絶望的にありません。
ポイントが近場の時だけ使えます。
6 結論
障害物に囲まれた際のキャストは、消去法でいってスパイラルキャストがいいんじゃないかと思います。
コントロールの練習は必要ですけどね。
ピッチングでいちいちルアーを持ちたくないという方もスパイラルキャストを選んでますね。
それからベイトリール限定の話ですが、フリップキャストは遠くまで飛ばそうとして初速度を上げすぎるとバックラッシュになります。
スパイラルキャストの場合は、たらしを長くすることである程度対応できるんですが。
そういう点もスパイラルを選んでいる理由の一つですね。
最後の付け加え。
ボウ・アンド・アロウという弓のように竿を曲げて飛ばす方法もあります。
あるにはあるんですが、ベイトリールでやると高確率でバックラッシュです。
(名作「釣りキチ三平」の「O池の滝太郎」にベイトリールでこれをやるシーンがあるのですが、現実的ではありません。)
クローズドフェイスリールでやると楽にできますが、なんというか特殊過ぎて一般的ではありません。
なので日常的に使ってる人もあまりいませんので、これについてはこの程度にしておきます。