心理士のエッセイを読みました。
めずらしいです。
心理学の本といえば、実用書がほとんどです。
それに、専門書が多少混じります。
本屋の棚を見れば、誰でもそう感じると思います。
もちろん、エッセイはどの職業の方が書いても問題ありません。
ですが、心理士はあまり書かないような気がしていました。
職業ライターのような軽妙な文体が題材に合っているとも思えないですし、一つのテーマでコンパクトにまとめるというのも心理学的題材でそうきれいにいくかどうか。
もちろん偏見です。
そんなことはないといわれれば、反論はできません。
でも、心理士の本って、どこか真剣なところがあって重くなりがちなんですね。
しかし、この本はそうではありませんでした。
「心はどこへ消えた?」というタイトルですが、心を探しまくっているわけでもありません。
なんと週刊文春で連載されていたとのこと。
軽妙で、それでいて心理学っぽい見方が随所にあって楽しめました。
楽しめた記事を感想を交えて紹介します。
一つ目は、「トイレ侍とウンコ男」です。
なんのことでしょうって感じだと思いますが、遊戯療法の話です。
トイレ侍はクライエント、ウンコ男はカウンセラーです。
クライエントは4歳児、トイレトレーニングに失敗しています。
それで、ウンコ男を退治すると、こういう心理になっているのです。
繰り返すうちに、ウンコ男に優しさを見せ始めるトイレ侍。
そして和解。
実世界ではウンコ男である自分を許し始めたのですね。
子供の成長にうれしくなります。
切られまくったウンコ男には、同情しかありませんけど
二つ目は「居眠り心理士」です。
クソがつくほどまじめなクライエント、それゆえ周囲から浮いています。
ある日、カウンセラーはカウンセリング中に居眠りしてしまいます。
クライエントは、おもしろがってそれをなじります。
いいふらします。
そうしているうちに、クライエントは間違いや失敗をし始めます。
失敗する自分を許容し始めたんですね。
それが自分の成長につながっていったのです。
三つ目は、「仮病は心の風邪」です。
「うつは心の風邪」というコピーがあったそうです。
しかし、心理士にいわせれば、うつは風邪にたとえられないくらい重いものだそうです。
風邪に相当するのは、仮病であると。
たまには仮病をして休みたくなるのが人間です。
風邪なので、数日で完治することでしょう。
仮病も、仮病と知った上で、仮治療をしてあげればよい。
そして、復活を待つ。
こういう理屈です。
おもしろいと思いました。
まあ、しょっちゅう風邪になってばかりでは、周囲も大変でしょう。
仮病のつけは、誰かが代わりに払っているものですから。
この他にもおもしろいエピソードがあふれている本です。
日常を心理学的に眺めるおもしろさ。
ぜひお読みください。
お勧めします。