心理学の棚で心理学っぽくない本を見つけました。
「奇跡の生還へ導く人」というタイトルです。
すごく落ち込んでいる人を助けるカウンセラーの話かと思いました。
とんでもない勘違い。
もっと神秘的な話でした。
内容にふれながら感想を述べたいと思います。
奇跡の生還へ導く人を「サードマン」といいます。
第三の人という意味でしょうか。
どういうことか分かりません。
実は,冒険や災害,戦争などで絶体絶命の状況に陥った時に表れる人です。
実在できるはずもない状況で表れ,窮地に陥っている人を励まし,助かる道を指し示す。
そういう人,というか存在です。
不思議ですよね。
筆者は,この「サードマン」の事例をたくさん集めています。
そして,どんな存在なのかを明らかにしようとしました。
サードマンに会った人の中には守護天使と考えた人もいますし,霊と考えた人もいます。
共通していることは自分を助けるものだという認識です。
こわい存在ではないんです。
この存在がどんな時に現れるかをさらに具体的に調べました。
分かったことは,単調で刺激に乏しいとき,他と隔絶されたとき,そして強いストレスにされされているときだそうです。
このことから脳が見せる幻覚と考える人もいるそうです。
それにしても,多くの場合,命を助けるような働きをするのはなぜなのでしょう。
少々つらい話をすれば,サードマン体験は助かった人の話から分かったことです。
サードマンが現れても助からなかった人の話は聞けません。
なので,必ず助かるものとも考えられないような気がします。
それはさておき,助かるような助言をするのは潜在意識の中で助かりたいという思いが強いからなのでしょう。
合理的にはそれ以外に考えられません。
少なくとも私には。
本書の中で,強い宗教体験もこれに類したものではないかという示唆があります。
なるほどとは思います。
極限の中で,命を助けられたとなれば信仰が強くなるのもうなずけます。
宗教的,神秘的似解釈せず,人間の心の働きとして考えるのであれば,人間の心はどれだけ強いのだろうと思います。
自分自身でコントロールできないところで,それでも自分を守ろうとする力や意志を発揮するのですから。
サードマン現象は,人間の強さを表しているのかもしれません。
さて,心理学の本を読もうとしてこの本を読んだのですが,ある意味人間の心の一面を考えることができて,よかったなあと思っています。
この本が心理学の棚になかったらたぶん読むことはなかったでしょうし,サードマンという存在についても知ることがなかっただろうからです。
でも,ジャンル違いはジャンル違いですね。
とはいえドキュメンタリーでもないし,私が整理係だったとしてもどこに置くか悩むとは思います。