1 本作の概要
前作の続きのようですが、少し趣が違いました。
オカルト風の題材が多く占めています。
1巻は科学探偵といった感じでした。
犯罪に科学で挑むというイメージです。
2巻は、というか1巻の最後の方も少しそんな感じでしたが、不思議に科学で挑むという感じになってました。
オカルトといっても、ライトな感じです。
いわば雑誌「ムー」風とでもいいましょうか。
一見不思議に見えることを科学で解き明かす。
こんな感じです。
作品の初出が1999年から2000年にかけてです。
1999年といえば、ノストラダムスの恐怖の大魔王の年でした。
トンデモ本が流行っていましたね。
オカルトを科学的に解き明かすのが話題になっていたころです。
まあ、オカルトを解き明かすのであれば犯罪をからめる必然性はなくなるのでは?
そういう疑問も浮かびましたが、おもしろいからいいでしょう。
ただ、そういう時代だったなあ。
とは思いました。
2 時間系トリック
表題は「予知夢」。
未来を知るというやつです。
推理小説でも時間系はよく使われています。
アリバイづくり、アリバイ崩しです。
本作では、どうして事前に知ることができたのか。
というところに焦点が当たっています。
湯川助教授がいみじくも話しているのですが、これは科学ではなく心理の問題である、というのは、その通りでしょう。
要は、認識の問題です。
人の知覚を科学で取り扱うのは難しいでしょう。
それに犯罪の解決、つまり犯人逮捕、に予知が当たっていようが外れていようがあんまり関係ありません。
本作でも、予知の解決と犯人の逮捕は直接関係しているようではないのです。
住居侵入及びひき逃げ犯はすでに捕まっていました。
まあ、自殺は巧妙な他殺でしたけど、それも犯人逮捕に直接影響したかというとどうでしょうか。
しかしながら東野さんはさすがのストーリーテラーですから、予知を解き明かすことで事件の背景を明確にするよう作品を構築しています。
このあたりはさすがとしかいいようがありません。
それにしても、時間系のトリックは結局人間の誤認を利用しているので、計画的に成立させるのは難しそうです。
どうしても、たまたまの要素が入るようになっていると感じました。
3 総評
この2巻を経て、3巻の長編「容疑者xの献身」につながるわけです。
3巻にオカルト要素はありません。
4巻以降もそうなって、しだいにオカルト要素はなくなっていくのでしょうか。
わたしとしては、湯川助教授は不思議専門じゃない方がおもしろいので、そっちに進んでほしいですね。
ただ、本作もオカルト的不可能な事象が解決されるという感じでおもしろかったです。
湯川さんに頼み込む草薙刑事のキャラクターもかたまってきたようで、これからどんどんおもしろくなっていくように感じました。
20年も前の作品ですが、十分楽しめる作品です。
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