ギスカブログ

 読書しながらスモールライフ「ギスカジカ」のブログ

【ネタバレ書評】安東あや「鎌倉不動産のあやかし物件」

1 本作の概要

タイトルがおもしろそうだったので手に取りました。

オカルトとミステリー風味というか。

好きなジャンルです。

主人公は女子大生。

親に仕組まれた見合いをします。

そこで出会った年上の青年。

見合いの席で主人公は幽体離脱をしてしまいます。

驚愕の展開。

それを助けたのは先の青年でした。

彼には霊能力があったのです。

幽体離脱しやすくなった主人公を助けられるのは青年だけ。

2人の奇妙な同居生活が始まったのでした。

2 本作の霊能力とは

この2人の霊能力はとても簡単です。

霊が見える。

これだけです。

不動産屋さんの事故物件を調べるのが仕事です。

事故物件の場合は誤解も多いので、まずは確認。

つまりは本当に霊がでるかどうかです。

その点でこの2人は有能なんですね。

なにせ見えるわけですから。

問題はここからです。

見えるだけなんですね。

なので、原因とか霊の思いとかはわからないわけです。

そこは普通の探偵のように調べる。

こういう展開になります。

なかなかおもしろい設定だと思いました。

3 各エピソードについて

1つ目のエピソードは、一戸建てに幽霊が出るというもの。

この幽霊は前に借りていた女優でした。

マネージャーと、トラブルというか悲恋があったというかそういう感じでした。

結局、実は殺人事件で犯人逮捕で終了。

ホラーというよりミステリーものになっています。

1つ目なので、お話のフォーマットを示す役割があったのかな。

オリジナリティがあるたミステリーだと思います。

こういう話が続いていくと思ったのですが、そうはならず。

2つ目から、もう変化球でした。

子供の霊が出るというのですが、正体は鎌倉時代の霊。

霊のでる家の飼い犬が原因でした。

犬なので収集癖があったのですが、なんと拾った矢じりに霊がついていたというのです。

鎌倉は昔の古戦場。

つまりは800年ぐらい前の霊。

う~ん。

犬が拾ってきたものが原因というのは、おもしろい発想だと思うのですよ。

ショートのミステリーとしてはアイデアも構想もいいと思うのです。

しかし、ちょっと幽霊の範囲が広がり過ぎです。

急に考古学風味が入ってきたというか。

2エピソード目に語る内容じゃなくて、もっと話数が進んでから語られるとよかったと思います。

3エピソード目が、伏線回収の話でした。

青年が引きこもり状態になった原因を解決する話です。

青年が中学生のとき、憧れていたお姉さんが兄を連れてきました。

その兄に霊がついていたのです。

しかも兄が殺した霊が。

その事実を伝えたことで一家は散り散りとなりました。

お姉さんを不幸にしたことがショックで引きこもっていたのです。

このお姉さんが再び現れました。

そしてなんと、別の霊に取りつかれていたのです。

まあ、お姉さんにまつわる人間関係のあれこれが絡まった話です。

いろいろあって、それを解決することで大団円。

なんですけど、物件が絡んでくるわけでもなく唐突に終わって感じです。

作中、主人公に思い出深い一夏のお話という感想を話させるのですが、これってマンガでいうと打ち切りの際にでてくるセリフでしょう。

唐突に終了です。

4 総評

不思議要素ありのミステリーとしておもしろいと思ったのですが、改めて構成を見ても1巻打ち切りになった感じを持ちます。

続刊もないようです。

この設定おもしろいと思うのですが。

1話のような話を続けられなかったのかなあ。

ラノベ風なので女子大生で婚約者で両思いというラブコメにならない設定が受けなかったのかな。

あるいは霊が見えるだけだと話が続かなかったとか。

惜しい小説です。

わたしは続きが読みたいと思いました。