1 本書の概要
ガリレオこと湯川准教授は、3作めで才能豊かな友人の犯罪を暴きました。
そのことで、警察に協力することを躊躇するようになりました。
この心理的障害を乗り越えることが、本作のサブテーマです。
2 「内海薫」というおもしろい存在
本巻から女性刑事が登場します。
内海薫さん。
草薙さんの部下になります。
この方、なかなか設定が強烈でして、仕事一途です。
事件解決のために何でも利用するって感じです。
なので湯川准教授の助けも積極的に利用したいのです。
「容疑者x」事件のこともあって、草薙さんは遠慮してたんですが、まあ関係なし。
ずかずか湯川さんに会いに行きます。
この強引さが、結果的に湯川さんを探偵の世界に引き戻したので、まあよしとしましょう。
なんかヒロイン枠に収まりそうなんですが、湯川さんはその気まったくなしでした。
今後どうなるかはわかりませんが。
本巻の第1話で、薫さんが示したトリックは実現可能性低すぎって感じになったのもおもしろかったです。
それがわかっていて協力する湯川さん。
こんな感じだから、前の事件の思い出が薄まったのかもしれません。
3 イワシの頭も信心から
本巻の題材でおもしろかったのが「ダウジング」でした。
ダウジングとは何か?
地中の水脈を見つける方法です。
ヨーロッパでは中世からある方法なんだとか。
本は木の枝や動物の角なども使っていたようですが、L字に曲げた針金を使うのが一般的になっているようです。
両手それぞれに軽くにぎった針金を持って歩きます。
地下に水脈があると針金が外側に開きます。
まあ、オカルトというか疑似科学というかそんな感じですね。
水が金属を動かす力が出ているという実験結果はありません。
本作では、少女が祖母から受け継いだ水晶の振り子でダウジングをします。
湯川准教授は、それを確かめる実験を用意しましたが、実験しませんでした。
少女との会話で、ダウジングに効果がないとわかったからです。
湯川さんの解釈はこうです。
少女には信じたい、あるいはもう既に決心していることがある。
それを信じる、あるいは実行するという際に、後押しがほしい。
それをダウジングに頼っている。
つまり、心の応援団ということです。
これって、日常でもよくあることですよねえ。
要は、自分の行動の責任を自分だけで背負いたくないんです。
必然だったといいたいのですね。
世に宗教がある理由のいく分かは、こんなところが理由でしょう。
かといって、そんなものはない、自分の人生は自分で責任を負え。
なんていっても、幸福になるとは限りませんからね。
それが人間と割り切ることも、必要です。
わたしはそう思います。
4 総評
巻名にある「苦悩」は、事件を解決することで誰かを不幸するという意味かな。
本巻で湯川准教授はそれを振り切ったように思います。
まあ、そもそも事件を起こす方が原因作ってますし、湯川さんじゃない誰かが解決しても同じことですし。
復帰してよかったと思います。
薫さんの登場で、草薙さんが窓際に追いやられました。
薫さんの強引な性格と行動力が作品を動かしやすいのかも知れません。
ヒロインになるかどうかは、まったくわかりませんけれども。
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