ポジティブ心理学の本でした。
ポジティブ心理学が何かは分からなかったのですが、本書は人が幸せになるためにどんなことをすればいいか、については書かれています。
まあ、ポジティブな心理になったりポジティブな状態の心理について研究する分野なんでしょう。
全部で52講あるのですが、一つ一つが短いので、サクサク読み進められます。
実際の講義はもっと長いのでしょうけど。
さて、印象に残った講義をいくつか話します。
まずは第一講です。
心理学としてのある実験が紹介されていました。
その実験とは、毎日五つ人に感謝したことを書くというものです。
なんかお坊さんが話しそうな内容です。
結果どうなったか。
続けた結果、人生に対する幸福度が上がったそうです。
この実験で何が変わったのでしょう。
幸福とされる客観的な条件は変わらなかったと思います。
例えば、収入、社会的地位、周囲からの愛情。
変わったのは、本人の認識です。
自分がどれだけ他人から支援されているか。
そういうことに気づくことが習慣になったのでしょう。
ですから変わったのです。
不幸な状態を幸福と思い込むのは良くありませんが、自分の状態をよく知ることは大切です。
これを考えずにできるようになったら、日々ずいぶん違ってくるのでしょうね。
これって、小中学校のHRで似たようなことをしたことあったと思います。
まあ、書き残すまではしませんでしたけど。
でも、こういうことって実験的な裏付けがあったんですね。
驚きです。
二つ目は、期待をコントロールするという講義です。
収容所で生き延びることができたのは、どんな捕虜か。
これは現状に絶望している人でもなく、明日助かるかもしれないと楽観的になっている人でもなかったそうです。
現状を受け入れながらも、希望を捨てていなかった人。
こういう人が生き延びることができたのだそうです。
これ分かる気がします。
今はしょぼくれた立場にいる私ですが、一時期花形部署に配置されたことがあります。
そこに配置されるのは2種類の人がいました。
一つは希望して異動した人。
もう一つは職命のままに異動した人。
で、花形だけに普通の何倍も仕事量があり結果を求められやっかみもすごい。
そんな部署をまっとうできたのは、2種類のうちのどちらだったか。
まあ例外はあったにしろ、職命のまま異動した人でした。
つまり希望も何もなく現状を受け入れ、でも何とかなるだろうと思っていた人です。
希望して異動してきた人は、精神を病む率が高かったと思います。
人間ってそんなものです。
話題はそれますが、なので志を高くもって突き進むという人生は、あんまりいいものじゃないという考えを持っています。
成功すればいいんですが、そうでない時は賭けた労力の分だけ反動がくる。
そう思っています。
閑話休題、本の講義の話に戻ります。
人間のやる気が最大になるのは成功率がどのくらいの時だと思いますか。
本書によれば、やる気が最大となるのは、成功する可能性が五分五分の時だそうです。
比べるのは不謹慎ですが、ギャンブルも勝てるかどうか分からない時が一番燃えるといいますからね。
こういうことを知った上で、期待をコントロールすると。
それが幸福度を高めるとのことでした。
最後は、未来からいまをながめる、という講義です。
どういうことか。
自分が高齢となり余命幾ばくもない状態を想像してください。
そこから現在の自分に助言をするとします。
どんな話をしますか。
これはそういう話です。
末期ガンの方は今を誠実に生きるようになるといいます。
現在のすばらしさ、他人への感謝、いたわり、そういうことが自然とわき出るようになるとか。
ところで、この余命幾ばくもない方は、それ以前の自分と何が変わったのでしょう。
実は何も変わっていません。
死の宣告を受ける以前も、その人たちは同じ知恵と能力を持っていたはずです。
新しい知識を身につけたのではなく、今までずっと知っていたことにはっきり気づいただけなのです。
でも、それで人生が変わる。
幸せになる。
つまり、才能とかじゃないんですね、幸福というやつは。
と一冊読了して、ポジティブ心理学が何を研究するのかが分かってきました。
読む人によっては、○教説話と変わらんじゃないかと思うでしょう。
でも、統計的な裏付けや厳密な調査・観察があるところが違うと思うのです。
客観的に研究しているのでしょうけど、研究結果を知っているだけで心が落ち着き幸福を感じる。
こういう学問はいいですね。
実際に研修したら大変なのかもしれませんけど。