ギスカブログ

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【書評】金間大介「静かに退職する若者たち」

1 本書の概要

新入社員とのコミュニケーションについての本です。

「について」という何について書いてるのか分からない言葉を使いました。

そのくらい捉えがあいまいになってしまいました。

まあ「心構え」なのか「技能」なのか、ちょっと判別つきませんでした。

こういう本が販売されるっていうことは、これに悩んでいる中年がいるわけで、必要感はあるのでしょう。

ここまでの記述で分かると思いますけど、私はこの手の本の必要感をあまりもってないんですね。

そんな読者の書評です。

2 コミュニケーションの必要感

中年、というか会社側からの必要感というのは、つまり人材の確保でしょうね。

つまりはやめてほしくないと。

こういうことです。

しかし、若者にとっては、それはどうでもいいことでしょうね。

コミュニケーションとれたからといってやめないに直結しないでしょうし。

ブラックとかどうこうで、よく風通しのよい何でも話せる職場みたいなことが話されるんですけど、まあ居心地のよい場所にこしたことはないんですが、こういうことって本質的じゃないんですよね。

仕事って、人間に精神的なプレッシャーをかけ続けます。

それは解決しません。

なので持病緩和みたいな感じで、こういうことがいわれるんでしょうけど、職場に人間ってコミュニケーションを求めているんですかね。

結局、仕事で対価を得ているわけで、それが満たされればいい。

自己実現とかそういうのって二の次です。

また、やめてほしくないって自分サイドの本音があるから、そしてそれが見透かされているから、フラットなコミュニケーションが成り立たないんじゃないでしょうか。

つまり、欺瞞の技術なわけで、虚しくならないですかね。

茶番なんだけど、仕方ないから若者がほどほどにつき合ってる。

これが実態でしょう。

とはいえ、そのほどほどを突き抜けて若者とコミュニケーションしたい。

と思ってるのでしょう。

けど、コミュニケーションの舞台がそもそもそんなだからどこまで行っても、無理に付き合わせてるって前提が変わらない。

これが問題だとしても、その問題って若者理解とかそういうんじゃないですよ。

問題の捉えがまちがってます。

3 仕事の価値

若者が1on1面接でも、それなりのマニュアルを持ち、真にコミュニケーションができない。

というのが筆者の問題意識だったと思うのですが、それって仕方がないんじゃないのでしょうか。

つまりですね。

仕事、会社から与えられる仕事がそういうものだってなってるんですよ。

つまり、マニュアルで対応しとけばOK。

その会社の仕事、そんな価値なんです。

これって、若者のコミュニケーションが、とかいう問題じゃなくて、そういう風に社会が形成されてきたからでしょう。

つまり個の問題じゃなくて、社会の在り方の問題ですよ。

必然として生じてるんです。

ある意味、現代の就活の結果です。

それで、社内の出世とかにあんまり価値を感じてないんです。

出世して、いい目を見る人もいるかもしれませんけど、多くはそうじゃない。

50に成ったら役職定年。

取締役になれるわけでもなく。

つまり、社内で居心地が悪くならないくらいは出世したいだろうけど、そのくらいなんですよね。

社宅の専業主婦の時代なら家庭のプレッシャーもあったでしょうけど、非婚だし、共働きだしの世の中ですからね。

無難に給料もらえたらそれで、になるわけです。

まあ、野心がある人は起業しちゃってると思うのですね。

そんな世の中で、人手不足で売り手市場になったら、そりゃ退職するでしょ。

そんなもんですよ。

退職しなくとも静かな退職をするでしょ。

そもそも、静かな退職の何が悪いのでしょうか。

仕事は就業規則に則ってやってるわけですし。

無理な目標を掲げさせられる時代でもないでしょうし。

そこで、やめないためのコミュニケーションといっても。

制度自体の虚しさしか感じませんよね。

4 総論

★★☆☆☆

2つかな。

こういう若者論というかコミュニケーション論って、たいてい本質から離れてるんですけど、これも類書の1つです。

自らを相対化して考える視点のなさ。

社会機能としてコミュニケーションをとらえていない点。

他者の行動や判断をなんとか自分で納得できるように解釈しようとする頑迷さ。

分析すべき対象は自分であることの自覚のなさ。

もし、これに心理学的基盤を置こうとするなら、そもそもその心理学があやしい。

静かな退職をするような人は昔からいて、「老荘思想」のようなものです。

それを「儒学」で解釈しようとするから、無理が出てくる。

そんな感じかな。