1 本作の設定
他の池井戸作品と同じく企業案件の小説です。
![七つの会議 (集英社文庫) [ 池井戸潤 ] 七つの会議 (集英社文庫) [ 池井戸潤 ]](https://thumbnail.image.rakuten.co.jp/@0_mall/book/cabinet/4123/9784087454123.jpg?_ex=128x128)
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「シャムロックの子供たち」と同様、短編集の形式を取りながら、1つの小説として完成させています。
そして、企業犯罪を題材としているのも同じ。
しかし、こちらの方が完成度が高いですね。
短編それぞれでの主人公が、なぜそのような行動をとったのかを、生い立ちにからませながら描写していくのも、他の池井戸作品と同じです。
しかしながら、救いのない人物ばかりでなく、会社的には成功していなくとも、共感したり応援したりしたくなる人物を描いているのがいいです。
主人公は八角という万年係長。
一番魅力的な人物でした。
2 内部告発
本作はパワハラから始まりました。
そういえば「シャムロックの子供たち」もそうでしたね。
つまり、パワハラにかこつけてある人物を失脚させたんですが、それは会社ぐるみの不正を隠すためでした。
パワハラによる異動でしたが、それによって昇進した人物もいます。
いい目を見ている人物ばかりなら問題が発覚することもないでしょう。
しかし、多くのコンプラ違反がそうであるように、内部の不満分子からことは発覚します。
主人公が八角で発覚に関わるというのも、言葉遊びなのでしょうか。
3 出世と違法行為
今回の企業犯罪は、リコール隠しです。
正確には、リコールではありません。
コストを抑えるために、強度不足の製品を知っていて使ったんです。
これは、詐欺ですね。
強度不足の製品はネジ。
しかも外注したものでした。
というわけで、取引先を含めて複数の関係者が関与していたものだったわけです。
そのことは社長までも知っていた。
というわけで中途半端な内部告発では握りつぶされるというわけです。
最初に気づいたのは社内不倫をしていた経理部員。
気に入らない営業部を陥れようとしたのですが、逆に不倫をネタに左遷させられました。
まあ、この人人格的に問題ありすぎなので、仕方ないと思います。
次は、自分を左遷させた上司をうらむ社員。
なんですが、この人も口八丁で世渡りしてきたのが嫌われていたので、うまくいきませんでした。
この内部告発を失敗する人に特徴的なのが、利己主義です。
社内で無人ドーナツの販売が始まるのですが、これにお金を入れないでもっていくのがこの手の人たちです。
このドーナツ販売、人の人格をよく暴いていたと思います。
いいガジェットでした。
最後に、八角さんがうまく立ち回って明らかにするのですが、八角さんも無事ではすみませんでした。
この方、有能な社員だったのですが、強引な営業で人を不幸にした経験から、仕事に対する考えを変えてしまっています。
なので万年係長。
でも、そこそこ有能なので切れないといった感じです。
お金じゃなくて人を幸せにする仕事をしろ。
確かにその通りなのですが、まあ現実は難しいですよね。
わたしも八角さんのように生きたいとは思いますけど。
4 総評
会社の中で行われる様々な会議。
重要な会議もあれば、形だけ行われる会議もあります。
その会議に焦点を当てた小説でしたが、会議自体はどうでもよくなっていました。
リコール隠しにかかわる社内人間模様。
こちらの方がおもしろかったです。
前任の尻ぬぐいをした原田さんとか、不倫に疲れ退職したOLとか、いろいろいい目を見させてあげたい人はたくさんいたんですが、結局いい目を見られたかはわかりません。
しかし、こういう人が幸せになってほしいと思います。
人を利用して生活する輩が、現実社会では多いのですから。