1 ADHDの方の仕事術
本書は共著です。
著者の一人はADHDであることを公言してまして、そういう集中力が続かない、うっかりミスが多い方のための仕事術を解説されています。
とはいえ、そういう方々だけに向けた本ではありません。
集中に欠けたり勘違いしたり、このようなミスは誰にでも起こることです。
そういうわけで、本書は手際よく仕事をしたい、いや仕事だけじゃなく日常生活を送りたいと思っている方すべてに役立つ本でした。
読んで、特に役立つと思ったことを紹介していきます。
2 見える化する
仕事を手際よく進める人は、どういう人なのでしょうか。
簡単にいえば、仕事の全体像をつかんでいる人です。
つまり、何をすべきか、今何をしているか、がわかっているということです。
逆にいえば、仕事が能率的に進められない人はこういう人といえます。
自分がしている仕事がどういうものかわかっていない人。
今、仕事がどのくらいまで進んでいて、後どのくらいで終わるかわからない人。
先の見通しがわからなければ、自分の労力をどのくらい残せばいいかもわかりません。
全過程を全力でやってはいけないのです。
なので、筆者は仕事を効率よく進められない人に次のアドバイスをしています。
手順書を作成する。
何をどうするかを書き出すというのです。
こうして、今自分が取り組んでいる仕事を見える化します。
そうすることで、落ち着いて仕事に取り組むことができるようになります。
この手順書ですが、やはり何度も取り組んだ方ですね。
実践的なアドバイスがありました。
一つは、いつまでにやるか時間を書き加えることです。
こうすることで、具体的な見通しをもつことができるようになります。
二つ目は、さらに実践的です。
今している項目だけが目に入るようにするです。
つまり、細かい段階やら時間やらが目に入ると気が散ってしまいます。
なので、今すべきこに集中できるようにするのだそうです。
何度も手順書を作っていないと、こんなことは思いつかないでしょうね。
3 マルチタスクは存在しない
要領のよい人は、いくつもの仕事を同時に片付けているように見えます。
憧れるでしょう。
しかし、これは幻想。
現実には存在しません。
マルチタスクをしているように見える人は、一つずつのタスクを順序よく処理しているだけなのです。
マルチタスクはシングルタスクだったのです。
なので、一つのことが終わるまで、他のことに手を出さない。
こう決心することが大切になります。
もう一つにすぐ終わることはすぐやる、です。
ものをしまうやものを取りに行くなど、いつでもできると思って後回しにしがちです。
しかし、それが乱雑な机上や乱雑な思考を生むのです。
できることはすぐやる。
そうすることで、頭もすっきりするはずです。
4 仕事はパス回し
仕事が遅い人に限って、自分で仕事を抱えがちです。
そして、自分のキャパシティを越えてしまう。
仕事は誰かに受け渡し、そして誰かから返してもらうもの。
サッカーやバスケットボールのパス回しのようだと思いましょう。
球技ではボールは一つですが、現実の仕事ではボールは一つではありません。
一つのボールをパスすると、別のボールがパスされることが頻繁に起こります。
だからこそ仕事の全体像をつかんで、どのくらいまで進んでいるか、誰が今しているかを知っていないといけないのです。
決して、自分一人で進めてはいけません。
マラドーナ級のスーパースターですら、パスをするのです。
組織で仕事に臨みましょう。
5 総評
本書は、理念的ではなく実践的なのがすばらしいです。
失敗談も多くあります。
だからこそ、本書の仕事術が説得力をもつのです。
まあ、正直にいえば自分には合っていない術もありました。
それは個性というもので、万人に合った手法など存在しないのだから仕方ありません。
本書の中から、自分ができそうなものを選べばよいのです。
読み物としてもおもしろかったし、役立ちそうだし、勇気や元気がでるよい本でした。