1 「話す」とは?
書名から年収の高い人が話題にしていることは何か?という意味だと思いました。
お金の稼ぎ方とか投資の仕方とか人脈の築き方とか、そういう平民が知らないような話についての本だと思ったのです。
まったくちがっていました。
これはセールス・トークの本です。
つまり3000万稼ぐセールス・マンはどんなセールス・トークをしているか。
と、こういう本です。
300万稼ぐ普通の人と比較しながら説明しているので、おもしろく読めます。
印象に残ったこと3点について述べます。
- 「ハッタリ」とウソ
- 言葉のレトリックを使いこなせ
- 上司に好かれる話し方
2 「ハッタリ」とウソ
500万の仕事を受けるとき、3000万プレーヤーはこう話すそうです。
「2000万で承ります」
初読、どう思いますか。
わたしがもし依頼主だったら、そしてこのサラリーマンをよく知らなかったらこう思うでしょう。
(交渉の始まりだ)
本書では、ここから仕方なく値下げする演技をして、950万で受けるという決着に至ります。
そして、双方お得をした感情をもって終わるのでよいと。
こういうお話です。
真正直に手の内を明かさず、最終的に利益を得るようにという例だと思うのですが、いささか現実離れをしているというか…。
おそらく、わたしに限らず相見積もりを取りますし、その場で結論なんかだしませんし、こうはならないでしょう。
そして、相場の4倍ふっかけた人、という印象だけが残ると思います。
とまあ、現実はこれくらいにして、筆者の言いたいことは、相手の心理を把握しながら商談を進めなさいということだと思います。
相手の考え、感情を理解し、こちらが有利になるように運ぶ。
そういう話術が必要であるということを述べているのだと思います。
本書には他にも「ハッタリ」の効能が書いてあります。
3000万プレーヤーは心理戦が得意。
そのための会話を磨きなさい。
こういうことなのだと思います。
3 言葉のレトリックを使いこなせ
どんな条件でも購買意欲を高め、購入につなげるのが3000万プレーヤーとのこと。
例えば、駅から遠い物件を売るときはこういうそうです。
「通勤の便利さはお金で買えても、環境は買えません。お子様の教育を考えれば、やはり環境のよい場所が好ましいのではないでしょうか」
そして、駅から近い物件ではこう言います。
「環境はもちろん大事ですが、通勤や通学時の便利さは、毎日のことです。それに駅から近ければ、売るときも貸すときも高値がつきます」
率直にいって、価値基準がぶれていますね。
とはいっても、3000万プレーヤーの価値基準は不動産にはないのです。
どこにあるのか。
それは、顧客の心にあるのです。
つまり、顧客が買おうと思っているその基準、そこをもう一押しするというわけです。
売るという目的に対してはまったくぶれていないことになります。
そして、ここでも心理戦です。
相手の心理を理解して話す。
どうもこれが秘訣のようですね。
4 上司に好かれる話し方
「キミたちの成長をいちばんに願っている。やりがいを持って働きなさい」
こういう声掛けを社長や上司からされたら、どう考えますか。
自分のスキルアップを考えたり、自己啓発セミナーで「働く意味」を見いだしたりするのは、とんでもない勘違いと筆者はいいます。
社長や上司の本音はこうだからです。
「会社の仕事に必要な能力を高めろ。そして会社に利益をもたらせ」
いや、実もふたもない話ではあります。
つまり、ここで注力すべきは会社にとっての成果を出すべきだということでしょう。
いわゆる「事業主マインドを持って働く」ということが、ほんとうに求められていることなのです。
続いて筆者が勧める言葉はこのようなものです。
「会社が好きだ」「こういう方法もあります」「難しいぶん、やりがいを感じます」
なるほどという感じです。
しかし、ここでも前の事例と同じ原理が透けて見えます。
つまり心理戦。
上司の心理を理解して発言しなさい。
こういうことです。
なんとなく本書の主張がわかってきたように思います。
5 総評
会話のマキャベリスト。
そういう印象が強く残りました。
しかし、3000万という目標を目指した人は、このくらい徹底するのが当たり前なのかも知れません。
それにしても、相手の心理を読むということの重要性は、強調してもし過ぎることはないようです。
こういう会話術を身につけた人も、プライベートでは無防備な発言をするのでしょうか。
そうだと人間味が感じられていいのですけれど。