1 女性社会学者の研究書
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文学的な題名ですが、学術書です。
イスラエルは1人の女性が3人の子供を持つのだそうです。
つまり、母親となるのが当たり前の社会です。
そこで、母親となった女性に母親となったことをどう思っているか、を調査したのです。
その中で、母親となっていることを後悔しているという人について調査しました。
これまでの女性学では、産まないことの議論はなされてきたのですが、産んだ後のことは調査されていなかったのだそうです。
興味深い結果となりました。
母親となったことを後悔している女性がけっこういたのです。
2 「母親」と自分
ここでの対立軸は「母親」と自分です。
これはどうやらトレード・オフの関係にあるようです。
つまりですね。
母親になって後悔をしている方は、本来の自分を失っていると感じているのです。
母親というか育児。
多くの労力と時間が割かれます。
調査された女性たちはそれをこなしています。
決して、虐待等で非難されるような方々ではありません。
つまり、ちゃんとした母親というわけです。
その彼女たちがいうには、「母親」は本当の自分じゃないというのです。
「母親」の役をしている。
そういう人もいます。
多くの方に、誇りあることをしている、そのうち慣れる、などのアドバイスを受けたそうです。
しかし、彼女らには役に立たなかった。
時計を巻き戻したら子供を産むか?
という質問に、躊躇なく産まないと答えています。
なかなか深刻です。
3 それでは子供は?
それほどまでに「母親」を嫌っているのであれば、自分の子供をどう思っているのでしょうか。
子供も憎んでいるのでしょうか。
自分の阻害した要因として。
と、論理的にはそう思うのですが、回答は反対です。
子供は好きである。
彼らに対して嫌な気持ちはない。
こうなのだそうです。
彼女らが嫌なのは、あくまで「母親」。
そして育児という行為なのです。
祖母になると、またあれが始まる。
そういう嫌な気持ちを持つ方もいたようです。
このあたりの感覚は、理解はできても共感は難しいですね。
つまり、ある種の仕事がどうしても嫌な人がいるように、「母親」「育児」が嫌な女性が存在するということなのでしょう。
4 総評
イスラエルという国は、まわりをアラブに囲まれていますので、人口減は国家存亡に直結します。
少子高齢化なのに対策をうたないのんきな日本とは大違いです。
そこで、このような研究がなされる。
国家の要望と個人の幸福は一致しないので、よいといえばよいのですがもやもやします。
さて、時計の針は戻せないし、人生にやり直しはありません。
この研究を生かすために、成人となった女性にこういうレクチャーをしていくようになるのでしょうか。
それも何か不思議な感じがします。
それに、ですよ。
母親にならない人生で後悔をしないかというと…。
それもまた、そういう生活をしてみないとわかりませんものね。
人生の幸福は、あくまで個人のものだから。