ギスカブログ

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【ネタバレ書評】恒川光太郎「真夜中のたずねびと」

1 本作の概要

ホラー短編集です。

 

 

児童虐待をするヤク中の母親と人殺しの父親とか、カツアゲいじめの果てに人を殺した弟とか。

もう書いていて嫌になってくる人間が出てきます。

それぞれの主人公はそれほどクズじゃないのですが、読後感はいいものじゃありません。

夏の怪談コーナーにあった1冊を手に取ったのですが、恐怖は感じませんでした。

嫌悪感ですね、この気持ちは。

こういうのが求められているのでしょうか。

2 「底辺」の描写

1作目は、霊感を持つ教祖のお話です。

この教祖の裏側まで描写していて、この人物の人生が本作のテーマでした。

霊感の裏側については、まあそうだろうなあというネタばらしが書いてあります。

そこが中心じゃなくて、この教祖自身の人生がテーマなんですね。

ミイラとか霊とか不気味なガジェットがいろいろ出てくるのですが、それらはテーマと直結するものでありません。

まあこの教祖、かわいそうな人生だとも感じたんですが、現状生業としていることがあんまりなので、それほど共感を持ちませんでした。

結局、信者をだまして金をせしめているのでね。

かわいそうなんですけど、そうじゃない人生の選択もいろいろとあっただろうと思うのです。

以下、短編一つ一つの感想を述べていってもいいんですが、すべて大同小異です。

社会の下層に生きる人たちのうち、犯罪に関わりながら生きているという人たちのお話です。

貧困でも尊敬に値する人生を歩んでいる人も多いと思うのですが、そういう方は出てきません。

人間性が「底辺」というかそういう人たちが出てきます。

そこに不気味に要素をからませてくるという感じの小説群です。

なので、ホラー要素を感じる人は感じるのでしょうけど、恐ろしいを与えるのが人間なので、得体の知れないものからの恐怖とかそういうものじゃないのです。

いわゆる怪談とは異なるということです。

そして繰り返しになりますけど、この「底辺」の描写が嫌悪感を呼ぶのですね。

考え方というか人間性というか、そういう部分でです。

夏向けの怪談のコーナーにあったのですが、微妙にジャンル違いだと思いました。

Amazonでは、高評価が多いのですが、こういうのを好む人が多いのでしょうか。

自分の感性が時代とずれているのかなあと思いました。

3 総評

短編は独立しているのですが、同じ世界観の中のお話集です。

なので、同じ登場人物が複数の短編に出てきます。

その一人に「人探し」を仕事とする女性が出てくるのですが、この人が興味深いと感じました。

この方を主人公とした話があるとおもしろいと思います。

というところが唯一、読後いいなあと思った点でした。

本作は、人間の醜さというかそういうものについて読んでみたいという方に合っているのかなあと思います。

私は現実社会で体験したことでそういうジャンルは満腹なので、読書では別のものにふれたいですね。