1 本書の概要
投資本です
勧めている投資法は「のんびり投資」。
名前から想像できるように長期投資です。
短期で、上がったから売り、下がったので買いを繰り返す投機を勧めているのではありません。
その逆です。
株価の上昇下降に一喜一憂するのではなく、生活資金以外のお金を投資に回して長く持つ。
ここまではよくある話です。
本書で勧めている「のんびり投資」の特徴は、投資先選びにあるようです。
どんな会社の株を勧めているのでしょうか。
2 投資先選び
一般には財務の状況などから投資先を選ぶと思います。
貸借対照表などを参考にするのですね。
こういうところは当たり前と考えているのかも知れません。
筆者の主張は、もっと観念的なものです。
会社の理念、志を知るというのです。
例えば、ホンダ。
ここは大企業になった今でも、技術優位の社風だといいます。
車の性能が表れた数値について質問すると、即答できる社員が多いのだとか。
こういう、そもそもの基盤を失っていない企業は長く持つ。
こういう風に筆者は考えているようです。
そして、社会にとって有益な企業に投資することによって、自分も社会に貢献しているという気持ちになる。
こういうことも述べています。
筆者は預貯金はあまり社会に貢献しないが、投資は貢献すると考えています。
消費することが少なくなった高齢者が株に投資することで資金の循環が生じる。
そうして経済に好循環が生まれる。
こういうことも主張しています。
3 総評
のんびり投資とかほったらかし投資とか、株のトレーダーのように売買を繰り返さない、預貯金のように持っているだけの投資を勧める本が増えています。
参入障壁を下げるためではないかと思っています。
株は素人が手出ししてよいものではない。
昭和ではこれが常識でしたから。
まあ金融知識が増やして、低金利なこの時代に株などに投資していくということは悪い話ではありません。
長期投資がよいというのもうなづける点です。
しかし本書には懸念があります。
本書は個別株投資を勧めているのですね。
そして、その企業の選び方を理念とかにしている。
これはどうなのでしょうか。
理念がよくても会社が大きくなるとは限らないのが世の中です。
この相関関係は、プラスだったらいいなってのがホントのところです。
例えば理念ですが、ソニーはものづくりから離れつつあるように思います。
エンターテインメント系に力を入れています。
それも「つくり」ですが、トリニトロンを作った頃とはちがうでしょう。
シャープも東芝もあんな感じです。
結局、長期で生き残る企業を見つけるには、理念だけじゃたりないと思うのです。
もう高配当しかしていない老企業、例えばコカ・コーラとかに投資するならいいとは思うのですが、それが本書でいうのんびり投資なのかどうかはわかりませんね。
というわけで、長期で維持発展する企業を選ぶのは、そう簡単ではない。
だったらインデックスファンドや債券ETFでもいいんじゃないか。
読後に思ったのは、このことでした。