1 優れた投資解説本
わたしが読んだのは、産経新聞出版からでている1冊でした。
内容装丁がほぼ同じで、自費出版のものもあるようです。
おそらくは、自分たちの会社の説明をするための本だったものが、好評のため商業出版となったのでしょう。
本書の内容は、そう想像できるくらい優れています。
たいへん勉強になりました。
何が1番勉強になったか。
それは、証券会社のブラックな手法です。
2 独立金融アドバイザー
著者は、元証券会社社員です。
退社して独立金融アドバイザーになりました。
退社した理由は、自分が思い描いていた仕事ができなかったからです。
顧客に損をさせるかもしれない商品を売る。
そういうことができなかったといいます。
証券会社は退職者の多い業界です。
そして再び証券会社に就職したくないというのです。
そこには、やはり何かがあるのでしょう。
独立金融アドバイザーは、証券会社から独立した存在で、証券会社の事情にとらわれず顧客に投資のアドバイスができるといいます。
日本ではあまり知られていませんでしたが、金融取引が進んでいる欧米では一般的な存在だとか。
こうして、ようやく満足できる仕事に就くことができたのだそうです。
3 証券会社のブラックな手法
さて、証券会社のブラックの手法とは何か。
基本的にこんな具合です。
まず、顧客に損をする確率が高い商品を短所をいわずに売りつける。
それから、短期間で人事異動をし、損をさせた顧客を後にする。
新しい担当がそれまでのことはなかったことにして、また損する商品を売りつける。
こういうことを繰り返すのだそうです。
こういうことをしても、売った商品がよいものであれば問題がないのです。
ですが、よいものではないのでした。
売ったのはこんな商品です
1 毎月分配型投資信託
有名ですね。
毎月一定の額の分配金が配られます。
これが投資で儲かったお金を分配しているのであれば幸せです。
しかし考えてもみてください。
そんなに毎月儲かるでしょうか?
儲かってないのです。
しかし、毎月お金が配られます。
どこからそのお金はくるのか?
自分の投資したお金からです。
結局、自分のお金を自分で受け取っているだけ。
そのお金は手数料等でどんどん減る。
まったくここまでアホな商品をよく開発し、人に勧められたものです。
ちなみに元本を払い戻す手法は、欧米では禁止だそうです。
2 ファンドラップ
ファンドラップはプロが運用しているので安心。
購入時の手数料がなく、ファンドラップ手数料と投資一任料の合計として年率1.7%の
手数料がかかるだけ。
というセールストークで勧められるのだそうです。
しかし、ファンドラップには間接手数料というものがあるそうです。
それが1.3%。
結局3%の手数料がかかるのです。
例えば、3%の利率で運用できたとしても、差し引き0でまったく儲からない。
こういうことになるのがとても多いのだとか。
投資に高率の手数料は厳禁です。
まったく儲からなくなります。
しかし、この間接手数料を説明しないことが多いのだそうです。
やれやれですね。
3 新興国債券
トルコ、ブラジル、南アフリカ…
これらの国々の債券は金利がとても高く魅力的です。
日本のようにほぼ0金利の国に比べて儲かりそうに見えます。
しかし、高いには高いなりの理由があります。
1つは、インフレ。
通貨価値の下落が早いので、利率が高くとも総体の価値が減ってしまっては意味がない。
こういうことです。
もう1つは、為替手数料が割高。
円からその国の貨幣に変えて、債券売り買いして、その国の貨幣から円に替えて。
と2買い為替を経るのですが、その度にドルなどと桁違いの手数料がとられます。
なので、手元に残るお金はどんどん減ると。
こういうことになるのだそうです。
3つ例を挙げましたが、どれもろくでもないものでした。
それでも経済好調な時は、これらの商品でも儲かるのでしょう。
しかし、そうではないことが多いのはご存じの通りです。
それから、証券会社と顧客は、致命的な点で対立関係にあります。
それは手数料。
証券会社は多くの手数料を取りたく、顧客はできるだけ手数料を減らしたい。
証券会社が手数料商売である以上、避けられない対立点です。
win-winな関係にはならないのです。
人手が少ないため手数料が安いネット証券が流行るのもわかりますね。
4 総評
本書は、自社の宣伝も兼ねているので、後半は顧客の感想とか申込方法とかが載っています。
なのでライバルである、店舗型の証券販売会社、証券会社・銀行・郵便局の価値を下げて自社を上げるという面はあります。
しかし、それを差し引いても本書の前半部分は読む価値があります。
おそらくは真実なのでしょう。
そして、投資商品の見方を知ることもできます。
そういう警告型情報として本書は非常に優秀だと思います。
投資を考えている方は、一読を勧めます。
それに読みものとしても、おもしろいですよ。