ギスカブログ

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【書評】邱永漢「損して覚える株式投資」

1 本書の概要

小説家、経済評論家の邱永漢さんのマネー本です。

楽天証券の口座を持っているとマネー本を何冊か無料で読むことができます。

今月そこで推薦されていたのが本書でした。

内容は、邱永漢さんの株式投資の歴史といったところです。

株の先達の話ってのは、大成功した人の話か大失敗した人の話しかありません。

邱永漢さんは、そこそこの成功をしていて、なおかつその成功を冷静に見つめています。

この立ち位置がとてもめずらしく、株式投資を客観的に見る目を養うことにつながるのではないかと思いました。

2 成功の原因

邱さんは自分の成功を、国の発展に帰しています。

邱さんが投資を始めたのは高度経済成長期。

日本の経済が拡大し続けていた時期です。

邱さんの時代の株式投資は個別株投資です。

株価が上がりそうな会社を見つけて買う。

こういう手法です。

長期であれ短期であれ、売買の差益で儲ける。

キャピタルゲインねらいというわけです。

この時期、もちろん失敗した人いるのですが、多くの場合よほど変な会社の株をもっていなければ儲けることができたのでした。

それは、すべてが右肩上がりだったので、株価も順調に上がっていったからです。

おもしろかったのは、1番儲けたのは会社の社長。

自分の会社の株を、売りたくとも売れない。

そういう状況で持ち続けたら、結果株価が上がり儲けてしまった。

こういうことがあったそうです。

いろいろ分析して、あれを買え、これはもう売れ。

そういうのはあまり当てにならなかったそうです。

3 証券会社は当てにならない

日本にはかつて4大証券と呼ばれる証券会社がありました。

大きな会社でしたから、邱さんは権威を感じていたそうです。

しかし、知り合いに紹介されたのはほんとに小さい証券会社。

そこで売買をするうちに、あることに気づいたそうです。

証券会社は大きくても小さくてもやることは同じ。

これです。

かつて株の売買手数料は固定でした。

だから、大きな会社だろうが小さな会社だろうがしていることは同じだったのです。

そして、大きな会社だから予想が当たるということもない。

大証券会社の部長がしていることは、要は資金が多いから大きく売買しているだけ。

確実なことは誰にもわからない。

こういうことがわかったのだそうです。

かといって、むやみやたらと売買をしていても儲かりません。

よい会社を見つけること。

このことが大事だそうです。

邱さんはこのように書いていました。

1割低く仕入れて、1割高く売る。

なるべく経費をかけないよう節約する。

商売とはどこまでいってもこういうことだと。

こういうことをしている会社を探すということです。

それが一般人には難しいのですが。

4 総評

本書は2005年刊だそうです。

最新の話題として、ライブドアのフジテレビ買収があげられていました。

あれ、そんなに昔の話だったんですね。

それはさておき、邱さんは儲けることができる株式投資として経済成長をする国への投資を薦めていました。

かつての日本の高度経済成長のような国を。

2005年では、中国を薦めています。

今となってはという感じですね。

今ならインドといったところでしょうか。

まあ、為替の問題や政治の問題もあるから外国への投資はそう簡単にはいかないでしょう。

しかし、経済の発展を信じるなら株式投資は信じるに足る。

そういうところは、いつの時代にも通じるものがあると思います。

今なら、オルカンあたりへの投資ならまちがいないっていうところかもしれません。

邱さんの時々いう言葉、日常感覚へ引き戻してくれる言葉が強く印象に残りました。

株はただの紙。

株の上がり下がりは誰にもわからない。

こういうことを一方で思っていながら株式投資をすることが、結果バランスのよい行動になるのかもしれません。

邱さんはもちろん庶民じゃないのですけれど、どこか庶民的感覚のある本でした。