1 本作の概要
神様相手の悩み相談の2巻目です。
設定は変わらず、なぜか神様の悩みを解決することになった青年の奮闘記です。
今回は相方が登場します。
神様が見える目、天眼を持つ女子高生。
まあ、華やかさがほしかったのかもしれません。
お人好しの青年と甘党のきつねの掛け合い漫才だけでもおもしろかったのですが。
2 貧乏神の苦悩
2巻目で貧乏神を出してきました。
やるなあ。
日本の神というのは、人間を超えた力をもつ何物かであって、倫理的に優れているとか人々を導いていくとかそういう存在ではありません。
そういう素質をもった神が現れることはありますが、それはたまたまです。
かえって、異能による禍をたたりと称して封じる。
こういうことの方が多いくらいです。
天満宮なんてこわいから神様にしちゃえって感じですものね。
さて、貧乏神は禍系の神様の代表です。
ただ命をとるまでは行わないので、ほどほど感がありますけど。
これの悩みっていうのが、不幸に負けず助け合う家族に取り憑きたいので探してほしいという、まあなんというか迷惑な願いです。
それで探す方も探す方だとは思いますが。
当然ですが、そんな家はありません。
貧乏神の依頼はかなえられなかったのです。
しかし、御用人のやさしさにふれたことで貧乏神は満足しました。
結局、誰も不幸にしない結末でした。
人がらの良い貧乏神を設定した以上、こうなるのも必然という気がします。
本書の解決とは、依頼ごとに対応するのではなく顧客(神様)を満足させることにあるのですから、これでいいのでしょう。
誰も貧乏にならないのはよかったと思います。
3 天眼の少女
さて、新しい登場人物の少女ですが、天眼を持っています。
この少女、ヒロインなので美少女なのはいいのですが、問題を抱えています。
孤独なのです。
なぜか。
自分が見える神様を他人は見えない。
他人と同質性を感じない。
自分の考えや気持ちを他人は理解できない。
ということで孤独なのだそうです。
自分の素質というか特徴をどうとらえるかは本人しだいですが、これで孤独というのは元々そういう気質があったのかなあとも思いました。
神様が見えたことによる実害も描写されていませんでしたし。
これ、ジョジョの花京院に似た描写があったことを思い出しました。
花京院は誰にも心を開かないと小学校に担任に心配されたという描写です。
「スタンド」が見えない人に自分を理解することはできない。
そういう描写でした。
でも、花京院はそこまで孤立した人格にはなっていなかったように思います。
まあ、異能でなくとも、人はすべて他人に理解されないというか分かってもらえない部分をもっています。
それをもって孤独になるかどうかは、やっぱり個人の資質による気がします。
さて、本作に戻ると天眼の少女と親しい神様の願いを御用人はかなえました。
正確にいうと天眼の少女と御用人が力を合わせてかなえたのです。
そこで、神様はもちろんこの少女の気も晴れたのでした。
これ、神様が見える人がいたという仲間意識というよりは、他人(神様や自分)のために懸命になっている御用人に心を動かされたということでしょう。
つまりは、信頼できる他人がいることに安心したと。
生まれ持っての気質はそうそう変わらないでしょうけれど、この後少女は少しずつ他人に心を開いていくのではないでしょうか。
まあ小説なので、恋愛おちかもしれませんけどね。
4 総評
本作10巻で完結するのだそうです。
実は3巻目まで読み終えているのですが、今のところ3巻の書評は書かないつもりです。
本作はフォーマットが決まっていて、それに沿った展開が繰り返される作品です。
昔の時代劇のようなものです。
マンガでいえば「こち亀」とかそういうのです。
小説でいえば「鬼平犯科帳」かな。
なので、好きな人にはたまらない作品ですが、書評となると少しの違いを水増しして述べないといけなくなります。
そして何より、嫌いではないが本作がとてつもなく好みというわけでもない私にはそれは楽しくない。
なので、人情ものが好きな人には薦めますが、一応書評はここで中断。
10巻目まで読んで、新たな発見があれば書きたいと思います。
好みですが、人情ものなら「じゃりん子チエ」のようなものの方が好きですね。
ただのいい人で終わらない人がたくさん出てくるので。