1 古典部シリーズの5冊目
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古典部シリーズとは、高校の部活古典部に所属する主人公が日常の謎と解くというミステリー小説です。
主人公は折木奉太郎。
名前から感じ取れますが、ホームズ役です。
今回は2年に進級した古典部メンバーが新入部員を獲得しようとする話。
何をするかわからない、たった1つの決めごとが1年に1冊文集を作るだけという部活、古典部に新入部員が入るとも思えません。
しかし、世の中には変わり者がいて、仮入部までした1年がいたのです。
しかし、その子も入部を止めると言い出します。
部長の千反田が自分のせいと思い悩み始めたことから、入部しない理由を明らかにするというのが、今回の主な柱です。
ですが、構成にちょっと工夫があります。
2 マラソン大会
その構成の妙とは、マラソン大会です。
マラソン大会の間に関係者から情報を聞き出し、ゴールまでに解決をする。
そういう構成になっています。
おもしろいと思いました。
歩きもの「夜のピクニック」とかはありましたが、マラソン大会とは。
校内行事のマラソン大会なんて、一部の長距離が得意な人以外はいい思い出なんかないだろうに。
と運動音痴なわたしは思ってしまいますが、そういう行事だからこそ他の目的に利用するのもありか、と作者の発想に感心します。
それにしても、本職の陸上部もマラソン大会好きそうじゃなかったですものね。
他の部の部員に抜かれると悪目立ちになるので。
3 新入部員の秘密
この新入部員には、人に知られたくない秘密がありました。
それは、中学時代の友人に関することです。
この友人に連れられて、いろいろな遊びを教わったのだとか。
それは、バンドの追っかけなど、けっこうな金額がかかるものもありました。
その友人は、自分の裕福な祖父をだましてお金を取っていたようです。
狭い地方都市。
裕福な祖父は名家であり、同じく名家の娘である千反田はそのことを知っているだろう。
また、頭脳明晰な千反田は、人の顔と名前を覚えるのも得意。
そういうことから、自分の中学時代の行動がバレるのではないか。
そう思った新入部員は、千反田と距離を取るために入部を取りやめます。
それが真相でした。
奉太郎は、仮入部後のエピソードや部員の証言を基に真相にたどりつきます。
ゴール直前に。
奉太郎はなんだかんだといって、千反田が悲しむのが嫌なんでしょうね。
なかなかはっきりいわないけれど。
ちなみに千反田が新入生に嫌われた理由をどう考えていたかというと…。
彼女の携帯をさわったからだそうです。
千反田らしいといえばそれまでですが。
4 総評
新入部員が入らないことがそんなに大事件かなあ。
と思ったのですが、どちらかといえば親しくなった年下の友達を失うことのつらさなのかなと考え直しました。
古典部シリーズはミステリーなんですが、謎解きはどちらかというとおかずでして、主食は登場人物の高校生活だったりします。
そういう点からみて、省エネ主義者の奉太郎がマラソン大会で謎を解き、部員の心のくもりをとるというのは、おもしろいと思いました。
古典部シリーズはずっと続くらしいのですが、2000年に高校入学した主人公たちは、現在すっかり中年なのだろうと思います。
中年の奉太郎たちにも、短編でいいから会ってみたいですね。