1 本作の概要
投稿小説サイト「小説家になろう」に投稿されたものがオリジナルだそうです。
ライトノベルですが、不思議要素は0です。
ライトノベルって、ドラえもんてきSF(すこしふしぎ)的要素が入っていることが多いのですが、本作はなし。
青春恋愛小説です。
上下巻で完結となっています。
ライトノベルなのでシリーズものなのかと思ったら、そうではありませんでした。
王道のボーイミーツガールものですね。
2 クラス・カースト
嫌な概念ですが、クラス・カーストというものがあります。
イケてる人たち、そうじゃない人たちみたいなくくりです。
ミルク・ボーイさんの漫才に「一軍」というのがありますが、どこでも似たようなものがあるのですね。
自分の経験だと、男子校かつ連帯感が希薄な学校だったので、そんなレベルすらのまとまりもなかったように思いますが。
わたし個人は嫌な「現実」なのでできれば考えたくもないのですが、本作の設定はこれが前提になってます。
つまり、下位グループの男子が上位グループの女子と恋仲になる。
こういう夢のあるストーリーなわけです。
ある種のトロフィーワイフ的なものなのかなあ。
つまり、現実にはほぼあり得ないと。
と思って悲しくなるのですが、高嶺の花と結ばれないかなと思っているのは男の常。
こういう夢が読みたいものなのです。
それはそれでいいんですが、やっぱりカースト的なグループが当たり前みたいな感じは好きになれませんでした。
それがリアルなんだからといわれれば、そうなんでしょうけど。
3 モテる男子とは
それで、主人公男子にあやかり、自分も美人にもてたいと考える読者もいるでしょう。
というか多いでしょう。
そこで、どういう経緯でくっついたかを振り返ってみました。
こんな感じです。
1 サンダルが壊れた女子を見つけた男子は靴を貸していっしょに歩く。
2 靴のお礼をきっかけにスポーツ大会や文化祭などの学校行事で親しくなる。
3 週に1回、塾帰りに電車でいっしょになる。
4 女子がからかわれた際に男子を好きじゃないという。
それを意図せず聞いた男子は女子を避ける。
5 誤解が解けてつき合うようになる。
特に、大きなきっかけやイベントがあったわけでもないようでした。
最初の靴くらいかなあ。
普通の高校生活です。
こういうつき合いもあるでしょう。
なので、要は女子が美人じゃなかったらまったくもって普通の話です。
それで、女子が男子のどこを気に入ったかというと、
① やさしい
② 時々、かわいいという
とこういう理由だそうです。
なんか、好きという感情が最初にあって、好きな理由を探しているような感じがします。
で、もてない男子が美人とつき合うという夢のストーリーなのですが、この女子がもういつの間にかこの男子にほれまくっていて、男子が何かの努力をして振り向いてもらったとかそういう要素はまったくありません。
いつの間にかほれていた。
これがすべてです。
まあ、わたしの行間読解力がないためなのかもしれませんが。
なので、実生活でこういう高校生活を夢見ている人には、なんの参考にもならないのでした。
4 総評
本作累計40万部を超えているそうです。
売れてますね。
何がいいのか。
と考えたのですが、たぶんラブコメのコメディの部分がないんですね。
で、実生活に近い設定で夢がある。
そういうところかなあ。
恋愛の心情描写がどうこうというのもありましたが、そこは恋愛小説としては普通かなと。
キャラが魅力的な小説かというとそうでもなく。
主人公二人はそれほどでもありません。
脇役の磯谷さん田村さんは魅力的ですけど。
というわけで、きれいにまとまっている普通の恋愛小説というのがわたしの評です。
おそらく、こういう高校生活がしたいと思っている方々の厚い支持があるのだと思います。
やっぱり「夢」なんでしょうね。