1 本書の概要
副業をする中高年のルポルタージュです。
最初にいっておきますが、これおもしろいですよ。
正直、副業本はちまたにあふれてますから、そういう本だと思ってたんです。
しかし、凡百の類書とはちがう。
副業に取り組むおじさんの奮闘を記しながら、その悲哀に共感する暖かいスタンス。
ユーモアもあり、悲壮感に終始しない書きぶり。
いやあ、久しぶりにわくわくしながらページをめくりました。
本書は、ネット界隈でよくある副業大成功、オレはやったぜ、お前もできるぜ系の話じゃありません。
というかほぼ失敗集です。
でも、それがいいんですよ、現実っぽいし、上から目線でもないし、ましてや嘲笑であるはずもない。
中高年のたくましさに元気をもらったくらいです。
2 5つのフェーズ
副業解禁は、給料が頭打ちなので、不況対策として始まったものです。
役職定年で手取りが減った中高年が副業に目を向け始めました。
ネットでは、若者向け副業の情報があふれています。
中高年のものは少ない。
実際の中高年はどのように副業に取り組んでいるか?
それが分かるのが本書なんですが、中高年の副業には5つのフェーズがあるといいます。
1 夢見がち期…副業に夢を持ちネットをさまよう。
2 とりあえず期…とりあえず手軽にできることを始める。
3 クリエイティブ期…ブログや動画投稿をするが壁に当たって滞る。
4 開き直り期…肉体労働的バイトで賃金を得る。
5 絶望とあきらき期…労働条件の悪さを理由にバイトを転々、または1に戻る。
取材の結果なんでしょうけど、これすごい説得力ありますね。
こうなるでしょうね。
世間の風ってこんなもんです。
ネット界隈では、副業で大金みたいな話がずいぶんありますが、そもそも副業でそんなに当たるんだったら、就職それでいいやんと思いますよ。
みんな就活やめてないでしょ。
これが答えですよ。
中高年が始めることにそんな夢ないですよ。
というわけで、結局できることを細々するのが副業の現実なんですね。
3 夜のお仕事
副業でおもしろかったのが「夜のお仕事」です。
普段、こういう仕事にふれる機会はありません。
副業とはいえ、よくチャレンジするなあという感心します。
仕事内容はいろいろあったのですが、嬢の送迎が一番興味深かったですね。
これ、会社の車を使うのかと思ってたのですが、自分の車を使うのでした。
いやあ、ラブホの人とかに覚えられるでしょ、さすがに。
いいのかなあ。
まあ、その業界の人も普段の生活ではそんなことふれないんでしょうけど。
車で待っている間読書していて、司馬遼太郎読破しているのが、なんかおもしろかったです。
仕事は仕事っていう割り切りがすごい。
案外、そういうものなのかもしれませんけど。
副業をしている方が長続きせずやめているのが何かを示しているような気がします。
気が滅入るのかな。
きっとそうなんでしょうね。
4 総評
★★★★★
星5つです。
中高年必読ですね。
教養とかもあるけど、文章もおもしろいですし。
副業に夢はないけど、現実をよく見れば楽しく生きていける。
そんな気持ちにしてくれる本でした。
これも令和の現実なんですね。
もっと景気がよくなれば、また変わるんでしょうけど。
でも、中高年も夢が見たいんですね。
なんか現実が厳しいほど、非現実的な夢を見るんでしょうけど。
心理的なバランスをとろうとする気持ちがそうさせるんでしょう。
とはいえ、どんな人も夢が見られる社会は最低限でしょうけどいい社会なんでしょう。
さておき、自分の行く末をいろいろと想像しました。
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