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【ネタバレ書評】三上延「百鬼園事件帖」

1 本作の概要

怪奇ミステリー小説です。

作者は「ビブリア古書店の事件手帖」で有名な三上延さんです。

ビブリアでは、本を読みまくり調べまくりをして作品を作り上げた感がありましたが、本作もそんな感じ。

内田百閒について、資料を読みまくって作り上げた感じです。

そう。

本作は昭和の作家、内田百閒に関わるミステリーなのです。

2 個々のなぞと大きななぞ

本作は短編集です。

4作の短編からできていますが、バラバラというわけではありません。

一続きのストーリーになっています。

一つ一つもおもしろいのですが、内田百閒を悩ませている大きなミステリーを解決するのが、本作の醍醐味といえるでしょう。

さて、主人公は内田先生ではなく法政大の文学部生です。

内田先生の授業をとっています。

それほど親しくない二人ですが、学生がよく利用するカフェで出会い親しくなっていきます。

親しくなるというか、学生が不思議な出来事に巻き込まれてしまい、それを解決するため内田先生と共闘するというような形なんですが。

この短編集なんですが、最初の二編は単独でも十分味わえる短編になっています。

なので、この二編の読後は、このような形式、主人公が怪奇風の事件に巻き込まれ、それを内田先生が解決する、のような形で進むのだろうと考えていました。

ところが三編目で雰囲気は一変します。

内田先生には苦悩があり、それは簡単に解決できるものではなく、それに伴った怪奇現象が頻発します。

それを解決するというのが、作品の大きな流れになっています。

四編目は、いわばエピローグ。

大きな事件が終わった後の後日談、というかそれに関わる前日談、のようなお話になっています。

短編連載が、実は単なる短編ではなくて、大きな謎を解決するまで続くというのは、よくある形式です。

ビブリアもそんな感じの短編集でした。

しかし、本作はその大きな謎が1冊で解決してしまっています。

つまり、本作に次作はない。

こういうことなのでしょうか。

3 総評

★★★☆☆

おもしろかったのですが、少々急ぎ足過ぎたような感じがします。

また、登場人物もそれほど親しみがもてる人物ではありませんでした。

何より、内田先生、気難しいのはいいとして、奥にある人間的な深みとかきらめく天才性とか、そういうものを感じませんでした。

また、サスペンスの題材となっている「もの」も、なんというか不気味ではあるんですけど、底知れぬ恐怖というのとも違いますし、それにそういうものがあるという設定はいいとしても、存在に必然性もないというか。

つまり、魅力がないんです。

なので、星3ですね。

読みやすいし、おもしくはあるんですけど。

おそらく、本作で完結で次作はないと思います。

といっても、残念、次作が待ち遠しい。

という思いが持てた作品でもありませんでした。