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【書評】リンジー・c・ギブソン「親といるとなぜか苦しい」

1 本書の概要

心理学書です。

 

 

不適切な親との関係を書いてます。

この場合、不適切なのは「親」です。

「関係」も不適切ですが、原因は親です。

まあ、環境不全による心理不適応の一つですね。

問題は「親」が要因として大き過ぎること。

影響絶大なんです。

今風にいうと、毒親ってことですね。

毒親って言葉自体は、ただの悪口っぽくて嫌なんですが、本書の内容を想像させるにはふさわしいです。

2  どんな親がが問題か

問題があるのは、どんな親か?

簡単にいうと、人の気持ちがわからない親です。

つまりですね。

能力とか性格とかの問題ではないのです。

人の気持ちが分からない。

子供の心情を推察できない。

こういう親です。

そういう親との日常的なやりとりによって、子供は心理的に疲弊していく。

そういう話です。

これも毒親といえばそうなのでしょうが、世の毒親よりは範囲が狭いですね。

どちらかといえば「カサンドラ症候群」を想起します。

人の気持ちが読めないASDと付き合った人が陥る症候群です。

適応障害になってしまうのですね。

親の場合のさらなる問題は、未成熟な子供が対応しているという点です。

後の精神的な影響が大きくなる。

想像に難くありません。

3 どんな問題が生じるか?

多くの心理的問題と同様、問題が外在的に現れる場合と内在化してしまう場合があります。

外在的な場合は、他人からも把握されますので、簡単ではありませんが「治療」に着手することができます。

認知行動療法とか、そういうことになるのでしょう。

問題は内在化した場合です。

他人に過度に気を遣い、自分に自信がなく、何事にも消極的になります。

しかし、極点を超えると過激になり、自暴自棄になる。

とまあ、心理的に安定しない性格になるのです。

カウンセラーに「でも、親の機嫌をよくすることはいいことですよね」といった例が挙げられていました。

即座の解答は「よくないですよ」。

まったくその通りです。

つまり、親は子供が自分のいいように反応するもの、という認識を強化していくだけですから。

おかしな環境の中で生き抜くために、変な適応をしているのです。

それに自分で気づいていない。

というか、気づけない。

まったくの悲劇です。

フランクルの言葉が思い出されます。

「人間はどんなものにでも慣れることができる。だが、どうやって慣れたかは訊かないでほしい」

うろ覚えですが、こんな言葉だったと思います。

「夜と霧」で最も心に残りました。

4 総評

本書の監訳者は岡田尊司さんです。

「シック・マザー」とかの著書があります。

 

岡田さんの本は、非常に示唆的だったのですが、幾分ちょっと言い過ぎではないかと感じた部分もありました。

しかし、岡田さんも本書の冒頭で述べているように、国が違っても同じような問題が生じていることは、人類に普遍のことであるのでしょう。

悲しいことですが。

幸か不幸か、親の資質を受け継がない子が生まれて、そこで葛藤が生じる。

いや、幸だったのでしょうが、それにしてもと思います。

こういう家庭というか親子を、わたしも知っています。

確かに問題の解決は、難しいのですね。

福祉や医療が関わっても、家庭というか親子関係の中にはそうそう踏みこめませんし。

そもそも当事者が問題と認識していないと、解決しないのですから。

発達障害というか心理的に課題を抱えている人を理解し支援するというのが世の流れですが、実際する人は大変なわけです。

それが子供だったらという話です。

ヤング・ケアラーの極端な例でもあるでしょう。

でも、ですね。

本書のような形で、こういうことが世に知られていくことはいいことだと思います。

「親」の救済が必要なんでしょう。

子以外の誰かの手による救済が。