ギスカブログ

心理学に興味津々「ギスカジカ」のブログ

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一番の道化師は誰か?

1 アルルカンと道化師

 半沢直樹の最新刊を読みました。
 舞台は,大阪西支店です。
 つまり半沢の若い頃の話。
 読む前から,この設定がいいと思いました。
 4巻で政治家まで相手にしていたので,いささか話が大きくなりすぎと感じてましたので。
 今回はネタバレで感想を話します。

2 小物の支店長

 今回の黒幕は,本部のお偉いさんなのですが,事件の発端を開くのは大阪西支店の支店長です。
 この支店長がもう小物くささ満載でいいですね。
 こういう困った上司っているよなあ。
 で,自分は有能だと思っていて,周囲に迷惑と実害をかけていくという。
 まあ,結局この支店長は罰を受けなかったのですが,でも今後いいめには会いそうもないです。
 問題を起こした動機が,営業成績アップと周囲の人へのぞんざいな扱い。
 小物臭さプンプンでしょう。
 でも,現実の職場にいる迷惑な上司ってこんな感じなんですよね。
 自分と上ばっかり見ているヒラメ上司。
 私は思わず笑ってしまいました。
 現実にいろんな顔が浮かんできてね。
 実害を受けている半沢さんごめんなさい。

3 身内での「政治」好き

 話の軸は,企業買収を進めたい銀行と自己防衛をしたい企業の対立です。
 融資課長の半沢は,企業側に立って仕事を進めます。
 まあいつもの半沢なので,企業側に立つというより筋が通っている方に立つといった感じですけれども。
 そこに,営業成績を上げたい支店長と半沢への私怨を抱く本部の元上司がからんでくるわけです。
 身内の「政治」好きって,ほんとよくいますよね。
 だいたい自分の組織を弱めておしまいなんですけど。
 声色は優しいけど,相手の気持ちを考えない人っているんだよなあ。

4 青年の夢と挫折

 もう一つの話の軸が「青年の夢」です。
 今回は画家の話です。
 夢と挫折はいいんですが,お金がからむのでめんどくさくなってます。
 まあ盗作と分かって価値が下落する。
 価値の下落はいつだってあるんですが,そこに青年の夢がからむので事態がこんがらがるんですね。
 話は横道にそれますが,最近,「信用創造」がMMTがらみで話題になってます。
 貨幣価値がどう生じるかって話です。
 価値の創造としては美術品も同じなんだなあと思いました。
 多くの人が信用するから価値が生まれるんですね。
 もしかすると,おおよそ価値なんてものはそういうものかもしれません。
 さて,青年の夢です。
 簡単にいうと盗作で世に出た人が,ほんとうにいいのかと葛藤するんですね。
 で,亡くなるんですが,その美術品を買った人が価値の暴落を恐れて隠蔽に走ると。
 まあ,美術に関心のない大半の人にとっては,どっちでもええがなって話ではあります。
 しかし,倒産とかとなると生首跳ぶわけで,ここが難しい。
 青年は挫折も許されないわけで,自業自得ではあるんですが,ある種悲劇ではあります。
 青年の夢と企業買収というイメージが異なる軸を絡めているあたりが,作品のおもしろさといえるでしょう。
 でも,美術史の真実を明かすっていうのは,いつもちっちゃい動機で始まる半沢直樹では,比較的納得できる動機でした。

5 半沢に託す人々

 半沢の進退に関して,多くの銀行員が心配しているという表現がありました。
 作中,半沢の部下や取引先が半沢のために動きます。
 それで助かるのですが,おそらく半沢に期待する人は読者にも多いでしょう。
 世の中には破れた「半沢」がたくさんいます。
 無理に負けた道理が普通で,それこそ「天道是か非か」みたいな話ばかりなわけです。
 話のおもしろさもあるのですが,現代社会の人々の夢を体現しているともいえます。
 半沢人気の一端は,ここにあるように思います。
 自作も若い頃の話がいいなあ。

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