発達障害で,今ひとつ分かりにくいものがあります。
注意欠陥多動性障害。
通称,ADHD。
これがとても分かりにくいのです。
なぜかを述べたいと思います。
1 辞書的な意味でのADHD
辞書的な意味ではそのままです。
注意欠陥とは,集中できないというより不注意によるミスが多いということです。
多動性とは,落ち着きがなく常に動いていること。
つまり,落ち着きがなくそわそわしていてたち歩きが多い。
そんなイメージだと思います。
多くの解説書もそのような感じで,マンガなどで紹介していることが多いです。
そそっかしくて,片付けが苦手で,何度も同じまちがいを繰り返す。
そんな感じです。
2 実際のADHD
しかしですね。
私が会ったことがあるADHDはこんな感じではありませんでした。
もちろん注意欠陥かもしれません。
多動かもしれません。
けれども,最も目立つのはそこではありませんでした。
一番目につくのは,感情の暴走です。
特に怒りです。
泣きながら怒ったりします。
その機嫌はなかなか直りません。
気に入らない相手はいつまでも気に入りません。
敵として認識しているかのようです。
怒りの原因は誤解によるものが多い傾向があります。
とはいえ,感情が暴走しているので,誤解という認識に至らないし,懇切丁寧に説明をしても受け入れません。
結果,対人トラブルがとても多い。
こんな感じです。
3 薬による治療
さて,ADHDは発達障害の中で薬が効く障害です。
自閉症系は,カナー型にしろアスペルガー型にしろ薬物療法はありません。
行動療法等の療育が中心になります。
ADHDはお医者さんから診断されて,薬が処方されます。
コンサータなどの脳内の神経伝達を高める薬です。
先の感情暴走傾向に方に処方するとどうなるか。
ちょっとのことで泣いたり大声で怒鳴ったりということが減ります。
落ち着きが見られるようになります。
というか,悪目立ちしなくなります。
これはどうしたことか。
おそらくこうだろうと思っています。
感情が暴走するのは,脳に負荷がかかり過ぎた結果起きたのでしょう。
脳を守るために感情が高ぶった。
感情は冷静な決断ではなく,短時間で簡易的な判断をするために働きます。
そのシステムが作動していたのでしょう。
薬の処方されたことで脳の処理能力が高まり,感情システムを起動しなくともよくなった。
結果,外見的には落ち着いて見える。
医者ではないのでほんとのところは分かりませんが,こんな風に働いているのではないかと思っています。
覚醒作用がある薬で落ち着きを取り戻す。
一見矛盾しているような感じですが,先にように考えれば納得できます。
3 ADHDの分からなさ
ADHDの分からなさとは,書籍等の説明が現実に診断された方と一致しないことにあります。
注意が難しかったり多動だったりしたとしても,本人は困るでしょうが社会生活上は問題がありません。
気を付けながら生活できるからです。
ところが,感情暴走系の方は社会生活がまともに送れません。
対人トラブルが絶えないからです。
敬して遠ざけられます。
結果,孤立します。
忘れ物が多い,じっとしていられないくらいで病院を訪れる人は少ない。
しかし,感情的で社会生活が送れなければ別です。
病院を利用する理由としては十分です。
それで,最近増えている発達障害は自閉系ではなくADHD系のように思います。
もちろん発達障害はスペクトラムでなだらかにつながっているという説も知っていますが,分かりやすくするため敢えて分けています。
増えているADHDですが,注意欠陥がそれほどでない場合,それは本当にADHDなのでしょうか。
どうも,ほんとうは愛着障害なのではないか。
そんな風に思えてならないのです。
最近増えてきたのは,実は家庭環境の変化,両親共働きなども関係しているのではないか。
そんな風にも思えるのです。
専業主婦や主夫がいる家庭のADHDの割合が低くなければ,この考えも間違っているのですが。
辞書的な状態のADHDがあまりにも少ないので,そう感じています。
この考えが間違っていればいいのですが。