愛着障害への関心から,1冊の本にたどり着きました。
「シック・マザー」です。
病める母親とは,なかなか重いタイトルです。
著者は岡田尊司さん,「愛着障害」の著者でもありました。
そう,著者つながりでこの本と出会ったわけです。
まだ読み始めたばかりなのですが,重要な視点が提供されていました。
今回は,このことについて述べます。
1 発達障害と愛着障害
このことは前にも述べたことがあります。
近年,発達障害が急増しています。
この障害の認知によって,今まで見過ごされていた者が見つけられるようになった。
そういう解釈が主流です。
そうであれば,問題はありません。
しかし,発達障害と診断される者の中に,実は発達障害ではなく愛着障害が多いのではないか。
このような示唆が提示されていました。
被虐待児童には,そうでない児童よりも有意に発達障害と認定される者が多い。
もちろん発達障害だから障害の無理解による虐待が起きたとも考えられます。
しかし,それだけではない面がありそうだとのこと。
発達障害は生得的な障害です。
一方,愛着障害は臨界期に適切な愛着関係が築けなかったことで生じるものです。
つまり環境要因です。
直裁的にいえば,育て方が悪かったということ。
なので,親とりわけ母親が責任を感じやすい。
そのため愛着障害よりも発達障害と診断することで,親を救うことになる。
発達障害増加に背景には,このことも一因としてあるのではないか。
こう述べられています。
私はありそうな気がしました。
もちろん,統計的な裏付け調査が必要ではありますが。
このような「誤診」は,心理的に親を救うかもしれません。
しかし,誤った処方・療育では子どもは救われません。
真の原因である心理的虐待がそのまま残されていたとしたら,よくて現状維持,多くは悪化でしょう。
この場合,治療というか対処すべきは子どもではないからです。
親を何とかすべきなのです。
2 シック・マザー
愛着の問題は,戦災孤児などの調査から始まったそうです。
つまり,物理的に親子関係がない状態の子どもは,どのような影響を受けるのか。
そういう研究です。
ここで愛着障害という状態の子どもたちが見つかったのです。
しかし,研究が進むにつれて,奇妙なことが分かってきました。
孤児ではない子ども,つまり家庭を持っている子どもにも愛着障害のケースが見つかったのです。
どういう家庭環境だったのか。
どういう親子関係だったのか。
こういう方向に研究が進むのも当然でしょう。
虐待,ネグレクトといった状態の環境では,育てにくい子どもだったというケースもあったのですが,それ以上に母親がうつであったり双極性障害であったりすることが多かったとのことでした。
シック・マザーです。
母親がいらいらをぶつける,否定的な対応を取る,縛りつけるなどの不適切な対応をすると,子どもは癇癪を起こしたり衝動的だったり破壊的・反社会的行動をとったりしたそうです。
また,無気力に引きこもるケースもあったとか。
そして皮肉なことに,子どもが元々健常だった場合の方が,悪い影響を受けやすかったとのこと。
皮肉にも感受性の高さがあだになってしまったのでしょうか。
3 親を救う
ここまでくるとすべての原因が親にある,となりそうです。
でも,原因を特定しただけでは救われないのです。
子どもを救うことはもちろんですが,親も救わなければなりません。
そうしないと幸せな結末はこないからです。
親の治療,親の支援・バックアップ。
そういったものが必要になります。
ただし,実際には家庭の在りようが様々なので,そう簡単に救うことができるとは限りません。
個々に応じてできることを探るしかないと思います。
冒頭だけでもずいぶん考えさせられました。
読み進むのを少し躊躇しています。
考えを整理してから先に進みたいと思っているので。
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