1 本書の概要
哲学者の紹介本です。
ストア派だそうです。
ストア派というのは、ゼノンが代表選手。
禁欲主義ともいわれるのだとか。
こういう人の哲学を紹介しています。
が、本書の一代特徴は、対話本だということです。
著者2人の対話で話が進みます。
まあ、ギリシャ哲学の本、プラトンのソクラテス本とかは対話で記載されているので、その伝統を踏まえているといえばいえる。
いえるのですが、最初に結論をいうとこうです。
わかりにくい!
いや文体は読みやすいんですよ。
エピクテトスのね、思想がね、何なのかつかみにくい。
これ、啓蒙本として失敗しているでしょ。
そんな感じです。
2 権内と権外の区別
そんな中でも、少し分かったことがあります。
エピクテトスは、権内と権外を区別するということ。
権内は自分で自由にできること。
権外は自分の力が及ばないこと。
これを区別して、権内の問題に集中する。
権外の問題に患わされない。
こういう考えだったそうです。
エピクテトスさんは奴隷から哲学の教師に昇りつめた方らしく、奴隷に自由にできることは多くないからそういう考えに至ったんじゃないかと、筆者は語り合っています。
まあ、真実は時間の彼方なわけでして、思想の源泉はどうでもよろしい。
心の平穏を保つには大切なことだと思います。
どっちが最初か、影響があったのかはは分かりませんが、アドラーの課題の分離に似ていますね。
ということは、同じ批判もあるわけですね。
この点には、著者はふれませんでしたけど。
しかし、その課題は考えるに値するかということは大事な問いだと思います。
3 禁欲とは
ストア学派というのは禁欲主義といわれます。
ストイックという用語も語源を同じくしているのだとか。
ですが、欲を完全に禁じているわけではないらしいのです。
仏教とキリスト教と比較しながら、筆者は説明をします。
仏教は、欲をなくす。
欲を滅してしまえば、迷いや悩みはなくなる。
そういう考えです。
キリスト教は、欲を禁じる。
罪を生じさせる7つの欲望。
それを禁じる。
しかしストア学派はそうではないとのこと。
欲をコントロールする。
これがストア学派の考えなのだそうです。
まあ、きれいに並べて図式化しているような気もするのですが、じゃあコントロールって具体的に禁じることや滅することとどう違うの?
同じような行動なのに、言葉を換えているだけじゃないの。
言葉遊び?
なんて思いましたが、そこはこの本ではわかりません。
著者たちは、禁欲ってイメージを薄めたいんだなあとは思いましたけど。
4 総評
★★☆☆☆
2つです。
エピクテトスに魅力を感じませんでした。
そういう意味で啓蒙本としてはどうかと思います。
多くの偉人に影響を与え、現代でも通用する思想。
なのでしょうが、正直その思想の中身がよくわからない。
著者が心酔していることは分かるんですけど。
対話形式も効果的なのかどうなのか。
プラトンぽくもっと理屈じみた対話の方がよかったかもしれません。
他の著書にあたろうという気持ちは起きませんでした。
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