1 本書の概要
児童虐待のお話でした。
児童相談所の仕事を紹介するという面もあります。
感情を抜きにしていうと、子供を育てられないというか他人の面倒はおろか自分の面倒をみれない人間って、昔から一定数います。
割合が少ないのが救いですけど。
それではかわいそうっていうので、現代社会では救済措置がとられているというわけです。
そのお話なんで、社会というか人間の暗部を見せられることになりました。
2 親権と家庭教育
遺伝か環境か。
なんて発達心理学の神学論争に入ることはしませんけど、人間の成長にこの2つはとても大事です。
で、虐待家庭なんですけど、まあ環境が最悪なんですね。
シングルマザーが再婚して養父に虐待、なんて典型例だけじゃなくて、実夫もろくなことをしてない場合があるんですよ。
つまり、人の世話なんてできない人たちなんです。
こんな人たちでも、クレイマーにだけは慣れるようで、学校とか児相とかにはまあクレームを入れまくり。
結局、クレームに負けて子供を家庭に戻し悲劇へ。
そんな感じです。
親権って強いですからね。
虐待防止法が成立したからといって、親が負けるとは限らないし。
事実認定が家庭内だから難しいのもあります。
家庭の教育方針。
この一言まだ力をもってますからね。
それと、日本社会は基本ことなかれ主義なので、クレームは収まればいいってのがあります。
不当でも何でも収まればいい。
ほんとです。
民間ならお金でしょうけど、学校とか児相では、要求を飲めばいいとなります。
子供の命にかかわったから問題になってますけど、これ子供が生き残っていて硬派な対応をした職員がいたらどうなっていたと思いますか。
日本では、まずまちがいなくその職員は行政処分をくらいます。
それが日本社会です。
3 発達障害
最近、一般にも知られてきた発達障害。
境界知能なんて用語も報道で用いられることが増えました。
発達障害って、そんな新しいものじゃないです。
正規分布図って習ったでしょ。
知的に低位の人と分布でつながっていますね。
だから途中の人もそりゃあいます。
で、知的はまだいいんですよ。
問題は感情。
つまり情緒が…何というか分布の端の人や、端につながる人がいるわけですよ。
最頻値(最もたくさん集まっているところ、つまり大勢の人がいる普通のところ)から遠く離れた情緒を持つ人もいるわけです。
まあ、人の世話はできないですね。
それで知能が人並みだったりするから面倒くさくなるんですけど。
で、虐待する人にはこういう人が割と多いとのこと。
そりゃそうでしょうとは思いますが、発達障害は病気じゃないので治療はできないんですね。
療育あるのみです。
本人が同意しないとできないものですが。
大人の療育は、正直難しいでしょう。
障害と自己憐憫はちがいます。
4 総評
★★★☆☆
3つです。
こういう本は、少々露悪的なところがありますし、知っている人からしたら常識なんですけど、一般に知らせるにはいいと思います。
個々の人間でみれば、子供たちがかわいそうでかわいそうで仕方がないんです。
ですが、人間社会というところでみれば一定数こういう人が現れるのは仕方ないというか。
それでも教育でずいぶん減ってきているとは思います。
でも、ゼロにはならないでしょうし。
児童養護施設や里親さんなど、かわいそうな子供たちに関わっている人には頭が下がる思いです。
本当は本だけじゃなくて、地域に児童養護施設があったら年に何回かあるだろう開放日に訪問してみるのがいいと思います。
現実をちゃんと知らないのに意見とかいう人が多くなった世の中だけに。
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