1 メンター
本書はメンターの在り方について述べた本です。
メンターとは何でしょう?
簡単にいうと、「相手をやる気にさせる人」です。
故人の能力を最大限に発揮させるために、精神面から支援をする人、といってよいかもしれません。
つまり、相手を高める人です。
本書は、会社における上司の在り方という点からメンターを語っています。
上司に、このような刺激的な言葉を投げ掛けています。
事業を成功させるのか、事業を成功させる人を育てるのか。
会社にとって、あらゆる面から見て有益なのはどちらでしょうか。
2 依存型人材の育成法
反面教師的といってよいでしょう。
もっともしてはいけない、依存型人材の育成法について筆者は語ります。
たいへんおもしろかったので紹介しましょう。
まず、依存型人材とはどんな人でしょうか。
・物事を自分にとって不都合かどうかで判断する
・他人からの指示をまち、まわりがしなければ自分もしない。
・求められたことだけをこなし、いかに自分が楽をするか考える。
・問題の原因は、常に相手や状況にある。
・他人に評価されないことはしない。
要は、仕事が嫌いで仕方なくやっている人材ということです。
一緒に働いていたら、いや隣人にいたら、もう確実に嫌になりますね。
こういう人をどうやって育てるか。
育てたいと思う人はいないでしょうが、意に反して育ててしまうことがあるのです。
その方法が管理的マネジメントです。
相手を思い通りに動かそうとする手法です。
具体的には、こうなります。
・相手に納得させることなく,無理やりやらせる。
・自分があきらめている。
・相手のせいにする。
・相手に関心を示さない。
4つあげましたが、本書では8つあげています。
この中で「自分があきらめている」とは、「この会社では無理だ」「社会のシステムができるようになっていない」などと、実現をあきらめていることです。
実現しようと思っていないのですから、できるわけありませんよね。
マザー・テレサの有名な言葉に「愛情の反対は無関心」というものがあります。
部下や同僚に無関心であれば、その相手が期待に応えることはないでしょう。
こういう姿勢が依存型人材を育てるのです。
多忙の中、無意識にしている方もいるのではないでしょうか。
3 メンタリングの行動基準
依存型ではない自律型人材を育てるためには、メンタリングを行うことです。
メンタリングには、難しい手法はありません。
従うべき行動規準が3つあるだけです。
その規準にしたがって行動することで、自律型人材の育成ができるのです。
では具体的に見ていきましょう。
1 見本となる
まずは、自分が部下や同僚の見本となるのです。
自分から始める。
まずはやってみる。
人を動かすのではなく自分を動かす。
こういうことです。
・やる気を出させる前に自分が出す。
・人に助けられる前に自分が助ける。
・話をよく聞く人を育てる前に自分が人の話を聞く。
・自ら難しい仕事に取り組んでみる。
こういうことを見ている人は、まねをしたくなるものです。
まずは自分から。
これが行動規準の第1です。
2 信頼する
行動規準の第2は「信頼する」です。
相手が信頼に値するかどうかを考えるのではありません。
相手をあるがままに受け入れ「信頼する」のです。
そもそも、相手が自分をどれくらい信頼するかは、自分が相手を信頼している度合いと連動しています。
自分が信頼する分だけ相手も自分を信頼する。
これが真実です。
だからこそ相手を信頼するのです。
そして、信頼の本気度は責任によって測られます。
信頼するといいながら、相手が失敗した時に相手を責めたらどうでしょう。
いくら論理的に正しくとも、それは信頼に値するでしょうか。
信頼した相手が失敗したら責任を取る。
泥を被る。
こういう姿勢があって初めて信頼が得られるのです。
部下の場合は特にそうです。
信頼して任せたら、責任は自分持ち。
この姿勢が大事なのです。
3 支援する
最後の行動基準は「支援する」です。
支援といっても、具体的な中身ではありません。
もちろん協力する、一緒に悩む・考えるといったことは大切です。
でも、それよりも大切なことがあります。
それは「支援する」という姿勢をもつことです。
姿勢です。
態度です。
相手に寄り添うことです。
これがない支援は「支援する」と認識されません。
相手の心は、あなたから離れていきます。
相手の側に居るということ。
もちろん、物理的にということは不可能な場合が多いでしょう。
心理的に側に居る。
これが大切なのです。
4 総評
メンタリング・マネジメントは何をマネジメントするのでしょう。
形式的には相手をマネジメントするのですが、それは本質的ではありませんでした。
相手を力を引き出す・伸ばすためには、相手にかかわる自分をマネジメントするのでした。
なにやら禅問答のようですが、真実だと思います。
相手をコントロールするなんてことはできません。
コントロールできるのは自分自身だけです。
だから、自分をマネジメントする。
それが、理想の上司に近づく最良の手段なのでした。
この本は、上司だけでなく人間関係を改善したいすべての人に勧められる本です。
理想論過ぎるといわれるかもしれません。
しかし、遠回りに見えて近道なのは、自分を変えることなのでしょう。