1 本書の特性
認知科学者が書いた本です。
人工知能関係の研究をなさった方で、心理学関係ではないようです。
特に臨床心理学とは縁遠い感じを受けました。
類型論のジャンルの1冊ではあります。
どうやら「ざんねんな生き物事典」に触発されてつくられた本のようです。
カバーの返しには「仕事でつきあう人の”あるある”を25属に体系化」とあります。
25もあったら、もっとまとめられないのでしょうか?
それこそ体系的に。
「ざんねんな人」について印象に残ったことを3点から述べます。
- 不安から逃れる
- 支配欲に負ける
- 人を利用する
2 不安から逃れる
「アピール属」「怒りんぼ属」などが典型的です。
これらの人は、不安から逃れるための戦略として「アピール」「怒り」を取っているのでしょう。
そうしている間は、「自分が有能・有用ではない」「悪いのは自分かもしれない」という不安から逃れられているからです。
人間は安心を求めるものです。
ほんとうであれば、「アピールしなくとも認められているよ」「怒らなくてもあなたを責める人はいないよ」ということを諭す人がいて、それを受け入れて平穏な気持ちに戻るのがいいのでしょう。
残念ながら、大人を諭す人はあまりいないし、諭しを受け入れられるような「できた人」もあまりいません。
不安な気持ちを抱えての行動である、と周囲が理解しておくぐらいが現実的な対応かもしれません。
3 支配欲に負ける
「おせっかい属」「議論属」などが支配欲に負けている人でしょう。
人間、上下関係が好きです。
というより人より上に立ちたがるものです。
上に立てば気分もよいし、相手も攻撃してこないので安心します。
残念ながら支配欲というものが根本的に存在しているのです。
「いじめ」というものがあるのも、こういう原罪的なことが要因としてあるのかもしれません。
しかし、支配されたい人はいないので、摩擦が生じます。
ルールに基づかないのであれば、上下をつけるとよい結果になりません。
これらの欲に負けないことが、長い目で見てよい環境をつくることになるのです。
4 人を利用する
「サイコ属」「ちらかし属」などがこれでしょうか。
人を利用するというのは、先の2つとは少しちがっています。
人を「人」としてとらえていない感じがする人たちなのです。
ほんとうに道具のように利用します。
こういうと人間味がない人のように受け取ると思いますが、そうではありません。
感情豊かな、人当たりよい態度で、愛想いい表情で、人を利用します。
外見と内面の関連は薄いです。
こういう人は悪気がないのも特徴です。
愛想よくかかわらないのがいいと思います。
5 総評
心理学的な知見が得られるかなあと思って読んだのですが、そうでもありませんでした。
人間をポケモンの○○タイプみたいに分類するのもどうかなあと思いましたし、人間そのものの洞察も深くなかったように思います。
まあ、気軽に読む本なので、そういう軽い部分が売りの本なのかもしれません。
つまり「これあの人に当てはまるなあ」ぐらいの読み物なのでしょう。
そういう肩肘張らずに読むには適していると思いました。
現実に「ざんねんな人」がいたら、「敬して遠ざく」が基本戦略です。
大人を変えようなどとすると、不幸に見舞われますので。