1 コンサルタントの仕事術
著者は、会社員を経て起業・経営コンサルタントとなった方です。
自分の長所である「コミュニケーション能力」を他の人にも身につけてほしくて本書を著したのだとか。
コミュニケーション能力は就職活動で最も重視される能力だそうです(2016年経団連)。
就職した後も重視される能力であることはまちがいありません。
本書で印象に残ったことを3つ述べます。
- 以心伝心はウソ
- 1回のディナーより365回の挨拶
- とにかくYESで返す
2 以心伝心はウソ
親しい仲では、特に言葉を交わさなくても気持ちが伝わるといいます。
日本人は、これを以心伝心といってきました。
こういうあうんの呼吸のコミュニケーションが理想と考えられたのでしょう。
しかし、筆者はこの以心伝心を信じません。
ウソと言い切ります。
コミュニケーションは、互いの信頼関係があって成立するもの。
最初から信頼関係など構築できているわけがありません。
以心伝心とは、「察してくれよ」という気持ちの現れです。
つまりは相手に期待して自分は何もしないという、甘えです。
コミュニケーションをしたいくせにしない。
これでは、信頼関係は成立しないでしょう。
まずは、相手に興味を持つこと。
そして一歩踏み出すこと。
それがコミュニケーションのスタートといいます。
3 1回のディナーより365回のあいさつ
もちろん高級ディナーはおいしいし、思い出にもなるでしょう。
しかし、1回だけだとしたら相手との関係はどうなるでしょうか。
日々、疎くなっていきます。
それよりも、毎日あいさつを交わしたらどうでしょうか。
会話するなんて思いもつかない新入社員と社長。
それでも、「おはよう」と社長が毎日あいさつをしてきたらどうでしょうか。
少なくとも社長に悪い感じはもたないはずです。
これは心理学でいうと接触理論というのだそうです。
接触回数が多いほど親しみを増すということです。
話題の選定が難しいし、会話も続かないかもしれない。
だけれども、あいさつなら気軽にできるはずです。
そして、あいさつ後の相手の表情をしっかり読み取る。
こういうことでもコミュニケーションが成立していくのだそうです。
正に継続は力なり、です。
4 とにかくYESで返す
これは、苦手な上司や同僚とのコミュニケーションの取り方で説明されていた方法です。
会話のコツは、相手に話させること。
相手の興味のあることを話題とし、それを教えてもらうという形式にすれば会話は展開します。
なのですが、どうしても感覚的に苦手という人はいます。
人間ですから仕方ありません。
そういう方との会話は、穏やかに切り上げたいものですが、そういう場合に限って相手は延々と話を続けるもの。
相手に嫌な感じをもたれることなくコミュニケーションをするにはどうしたらいか。
筆者は、YESを繰り返すことを勧めています。
「そうですね」「よかったですね」と共感の返事を続ける。
反論はせず、共感に徹する。
これがよい結果につながるといいます。
生産的ではないかもしれませんが、この場合は最悪の結果を避けることが大切なのだそうです。
5 総評
筆者の経験を心理学的な裏付けで説明した良書でした。
技能・技術と割り切ること。
具体的な行動を起こすこと。
うまくいかない人とはくよくよしないこと。
そういうスパッとした結論も読者の心を軽くしています。
もちろん、本書の内容をすべて実行することは難しいかもしれません。
でも、あいさつやYES、相手に興味をもつなどは何だかできそうな感じがします。
そして、できることから始めようと自分が変えられそうな気もします。
1つでいいから始めてみる。
それがコミュニケーション能力を高める1歩なのかもしれません。