1 本書の概要
忘却探偵掟上今日子シリーズの3巻です。
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今回は短編集で、全3話でした。
1話目はアリバイ崩し。
2話目は密室殺人。
3話目がダイイング・メッセージ。
どれも推理小説でおなじみのガジェットです。
最速の探偵がそれらをどう処理するのか。
これが本書の醍醐味です。
2 忘却探偵
本シリーズの重要な設定は、主人公が忘却探偵だということです。
掟上今日子さんは、記憶が1日しかもちません。
寝たら記憶がリセット。
毎日が記憶喪失。
そういう設定です。
なので、記憶がリセットする前に事件を解決しないといけません。
メリットとしては完璧な守秘義務履行能力があることです。
というわけで、どんな難事件も1日で解決。
そういうキャッチコピーの探偵です。
3 アリバイ
最初の事件はアリバイ崩し。
アリバイは現場不在証明。
要は犯行が不可能なことを証明する方法の1つです。
本件では、容疑者が風呂場で感電死した時刻に誰かと会っていようとします。
カフェで初対面の相手と会話を楽しんだ容疑者。
アリバイは完璧かと思いきや、会った相手が今日子さん。
記憶リセットでアリバイは不完全なものになりました。
しかしながら、死亡時刻に現場にいなかったのは事実。
死亡時刻がズレている等のあらゆる可能性を探っていきます。
このお話のキモはこの事件が犯罪じゃなかったという点です。
少し期待はずれでした。
4 密室
第2話は密室殺人です。
場所は洋服屋の試着室。
おもしろいところを見つけるなあ。
感心しました。
密室殺人は犯人からするとオーバークオリティです。
犯人は自分が見つからなければいいので、犯罪が可能かどうかはどうでもいい。
結果、不可能であれば犯罪ですらなくなるのでいいのでしょうが、そこまでする必要がありません。
本件は試着室に鍵がかかっていたという点で密室殺人なのですが、実際は鍵がかかっていなくとも成立する事件でした。
本質はアリバイ崩しでしたので。
まあ、探偵としてではなく雇われた今日子さんがおもしろかったと思います。
5 ダイイング・メッセージ
最後はダイイング・メッセージです。
ダイイング・メッセージとは、死んでいく被害者が犯人の手がかりとして残した文字等です。
何で名前をハッキリ書かないかというと犯人に消されるからです。
しかし、消す余裕があったら名前じゃなくとも消しそうですけどね。
それで今回なんですが、犯人はダイイング・メッセージがあることに気づいているけれど消しませんでした。
なぜか?
それが犯人を指し示しているのではなく、大事な金庫を開けるナンバーかもしれないかったからです。
それで、今日子さんがダイイング・メッセージを解くという流れになります。
とはいえ、このメッセージは割と知っている人には楽なものでした。
そして、鍵のナンバーだったのですが、二重の罠がかけられていたのです。
つまりですね。
ダイイング・メッセージに反応する人が犯人という罠です。
まあ、おもしろい視点だなあと思いました。
6 総評
本書の題名には「挑戦状」とあります。
これは、読者への挑戦状という意味でしょう。
つまり、途中までで問題を提示して、名探偵が解く前に犯人やトリックを解いてみてください。
こういう趣向でしょう。
それで、実際に解けるかというと、わたしは解けませんでした。
第1話は、そういう解決?って感じでした。
第2話は、犯人をしぼるまでにはいきませんでした。
第3話は、暗号解きは、知らないと解けないのでこれは門外漢だったというか。
と言い訳じみてきましたが、挑戦状なら犯人候補もきちんとあげて提示した方がいいのではないかと思います。
とはいえ、この短篇集がおもしろくないかというとそんなことは全然ありません。
掟上今日子というキャラクターのおもしろさもあるからですが、とても人物がいきいきとしていて楽しくなってきます。
著者の筆力が高いのでしょうね。
ライト・ミステリーとして本書はお薦めです。
読んで損はなく、おもしろさを絶対感じると思います。