少し前に評判となった本だと思っていたのですが、発行は2000年、もう20年以上前の本でした。
男と女は、脳の特性が生物としての異なるので理解し合うのは難しいというのが趣旨です。
というか、違っていることを前提に付き合え、という主張です。
生物としてというのがポイントで、フェミニズムからの批判をかわしているのです。
印象に残ったことを話します。
さて、現代に至っても、脳の機能は解明されていません。
解剖したところでソフトウェアが分かるはずもないし、倫理的に実験などできないからです。
そこでアンケートやら行動観察やら実験やらで間接的に人体の仕組みを探ります。
このこと自体は統計的に妥当であれば問題ありません。
ただし、何を調べているのかは問題として残りますけど。
つまり生物的な違いなのか、文化的社会的な違いなのかはこれでは分からないということです。
違っているということは分かるのですが。
さて、男女それぞれの長所は多くあるのですが、代表的なものとして筆者は次のものを挙げています。
男の空間能力、そして女の言語能力です。
さて、空間能力で例に挙げられているのが地図の見方です。
男は立体的に地図を読み取り、ルートを推察する。
女は物語のように道順を覚え、それを想起する。
簡単にいうとこんな感じで地図をひっくり返したりして見るのは女性が多いのだとか。
カーナビが普及した現代では女性もそんなに困らないでしょうけども。
しかし、理数系の仕事に男性が多いのはなんとなくそうかなとも思います。
近年の私立大医学部不正入試をみると、ややこの話もあやしくなりますけどね。
さて、こちらは日常生活では問題を起こしませんが、次はほんとよくある出来事になります。
夕方の夫婦の会話です。
妻は話を聞いてほしいだけです。
でも夫は、相談をされたと思っている。
それで夫は解決策を提案して話を打ち切る。
しかし、妻は自分の話を聞いて共感してほしいだけなので、提案などはどうでもよい。
それよりも話を打ち切られてしまい腹を立てている。
こういう構図です。
まあ、よくありますね。
筆者にいわせれば、女性は言語能力にたけ、マルチタスクなので様々な話題を取り上げながら会話を続けることができる。
男性は、シングルタスクでなるべく素早く問題を解決したいので、会話をすること自体に価値を置いていない。
こういう理由ですれ違いがおきるのだそうです。
解決策は、お互いに相手がそういう特性を持っているということを知るということです。
そして、それに応じた対応をすることで、決定的な対決を回避できる。
これは、ほんとにおもしろいなあと思いました。
私も職場で部下から相談やら訴えやらが来たことがありまして、辛抱強く聞いていたのですが、一向に要領を得ず、どうしたいのかは最初から分かっているのに、いつまでも付き合わされることに閉口したものでした。
今思えば、ほぼ女性でした。
つまり、解決策などどうでもよかったのですね。
あの時このことが分かっていれば、ご機嫌を損ねることもなかっただろうに。
ほんとそう思います。
さて、この本は世界各国でベストセラーになったようです。
それも分かります。
類型的でおもしろいですからね。
でも、男女の脳が違うというのが真実かどうかはよく分かりません。
社会的文化的要因の方が、すなわち環境要因の方が大きいだろうし、性差よりも個人差の方が大きいような気がするからです。
しかしながら、この本は読み物としておもしろいし、時間もかけずにさっと読めるので、夫婦生活に悩んでいる人がいたら読んでみるといいかもしれません。
円満にするための実用的な策も載っていることですしね。