1 本書の概要
バイデン政権の外交奮闘記です。
バイデンは3つの戦争に対応しなければなりませんでした。
ガザのネタニヤフ。
そしてフロリダのトランプです。
本書を読むと、バイデンが政権運営をするにあたって、どれだけ共和党を操るトランプを意識せねばならなかったかがわかります。
フロリダにもう一つ大統領府があったかのようです。
この辺りは、日本にはまったく伝わっていなかったことですね。
2 信頼できないプーチン
ヨーロッパ諸国のみならず当事者のウクライナでさえ、ロシアが本当に侵攻するとは考えていなかったようでした。
バイデン政権は、侵攻すると確信していたようです。
歴史的に、それこそキエフ大公国の頃から、ロシアとウクライナは一つの国であって、ソ連崩壊時に悲劇的に別れただけ、という認識のようです。
この辺りの認識は、当事者でないとわからないところです。
ただですね、世界恐慌時のスターリンによるウクライナの扱いなどは、とても兄弟国に対するものとは思えないですけど。
そして、多くの予想とは別に、バイデン政権が予想した通り、プーチンは戦争を始めました。
プーチンは電撃作戦でウクライナを制圧するつもりだったようです。
しかし結果はご存知の通り。
世界に名を轟かせたロシア陸軍は、ウクライナの反撃に沈みます。
泥沼の消耗戦を続けることになりました。
バイデンはベトナム・アフガニスタンの轍を踏まないよう、派兵を避けています。
アメリカ兵の被害がないという1点においてのみ、バイデン政権は成功したといえるかもしれません。
3 復讐鬼ネタニヤフ
ハマスは民間人を襲い、今現在も人質をとっています。
バイデン政権は、戦争の拡大を防がなければなりません。
イスラエルを抑えなければならない。
しかし、政治家としてのネタニヤフは、美しくいえばタフ、俗にいえば腹黒で信頼はできない。
まったく難しい舵取りです。
ユダヤ対アラブとしてしまったら、もう止めることはできない。
具体的には、イスラエルとイランを戦わせてはいけない。
どちらも負けそうになったら核を躊躇なく使う国です。
まったく油断なりません。
それにしても、です。
アラブ人とユダヤ人はもともと宗教が違っていただけの人々です。
それがここまでこじれるとは。
さてネタニヤフです。
彼はとにかくハマスを殲滅するまで戦闘をやめないつもりです。
そのためには、ヒズボラにもちょっかいをだす。
イランと対決することになんの躊躇もない。
イランだけですめばよい方で、他のアラブ国を巻き込んでも構わないとまで考えている。
イスラエルの人々は、彼を頼もしいと感じているのでしょうか。
右側の政治家というものは、国内にいると客観的に評価しずらいのかもしれませんが、危険な政治家のように感じます。
4 フロリダのトランプ
正直、アメリカ国民でないとトランプの魅力がどこにあるのかさっぱりわかりません。
アメリカのリベラルがいいとはいいませんが、トランプに常識があるとは思えません。
最近の関税政策に対して、報道も遠慮がちですが、愚策だと思っているはずです。
景気をよくするなら、楽市楽座に勝る政策はありません。
物価を上げてまで自国製品を国民に買わせる。
そんなことができるわけないし、できても継続できるわけはないのです。
しかも、彼は相手をフェイクといいながら自分は嘘をつく。
典型的なデマゴーグなわけですよ。
しかし、にも関わらず大衆は彼を支持する。
選挙の負けも認めず、大衆を暴徒とした。
危険ですし、不幸な将来しか見えない。
イーロンとも仲違いしましたが、政権内での内ゲバは第一次政権からの悪癖で全然治っていない。
年老いて頼りなく見える男と銃撃されても立ち上がるタフな男。
プーチンよりもネタニヤフよりも対応が難しい相手だったと思います。
実際、バイデンは負けました。
5 総評
★★★☆☆
3つです。
読み応えもあるし、文章も平易です。
分量は相当ですが、一気に読めます。
そして内容も興味深い。
ルポルタージュではありませんが、膨大なインタビューに裏付けられて信頼度も高い。
しかし、バイデン前大統領の視点から見た世界であり、多面的ではありません。
そこへの配慮が減点になったかな。
何よりバイデンという人間に主人公たる魅力が薄いんですね。
それがおもしろさを損ねている部分です。
まあ、日本の政界を題材にこんな本が書かれたらと思うと、アメリカがうらやましくなる本ではあります。
