1 本書の概要
日本で読めるパレスチナ問題の本は、イスラエルとアラブを公平に扱おうとしたものが大半です。
日本の同盟国であるアメリカが支援しているイスラエルよりの本も多いくらいです。
どちらかというと、イスラムへの共感が少ないような感じもありますね。
そして、この問題は2000年の問題であり解決が難しい。
そういう論調が多いです。
本書は違っています。
思いっきりパレスチナよりです。
イスラエルを侵略者としてとらえている。
そういうスタンスです。
新鮮でしたね。
2 侵略者としてのイスラエル
人権が極限までなくなった状態。
そして「アンネの日記」
そういう「ナラティブ」がユダヤ人に固有の国を持たせる必然性を感じさせるのです。
しかし、約束の地カナンにはすでに人が住んでいます。
そもそも、アブラハムに神が約束した時も人が住んでいました。
聖書には、それらの人々を滅ぼし尽くさなければならないと書いてあります。
つまりは、この興国運動には、そもそもの始めからそういう思想があったんですね。
パレスチア人にとって、不幸なナラティブが始まったのです。
3 ガザの現状
イスラエルのガザやヨルダン川西岸に対する政策は一貫しています。
嫌がらせをして、土地から出て行くようにする。
これに尽きます。
だから壁をつくり、イスラエルに入る際には不必要な手続きで時間をかけ、必要な物資の移動は最小限、アラブに害する人々にはお目こぼしをする。
そんな感じです。
パレスチナの人々が自爆テロをするのは、そういう現状にあきらめた上でのことという側面があるのだとか。
パレスチナの人々にとっては、災難でしかない。
2000年も前のことなんて知らない。
ユダヤに悲劇は、ドイツが引き受ければいい。
イギリスはウソつきだ。
そう思っても仕方がないでしょう。
そしてガザですが、これは大きな監獄のようです。
少なくとも本書を読む限りにおいては。
最低限の流通を残して、イスラエルはここを封鎖しています。
なので下水道等のインフラは最低の状況らしいです。
海にもイスラエルの軍艦が浮いているので漁も満足にできない。
とにかくここから出て行けという感じの政策です。
4 筆者の主張と「総評」
筆者の主張は、ガザの現状を世間に知らせるということです。
この悲惨な状況を理解してほしいということ。
米国の大学生の行動の背景にはこういうことがある。
そういうことを日本ではあまりにも知られていない。
まず、知ってほしい。
そういうことです。
それを踏まえての総評ですが、こうなります。
★★★★☆
4つです。
読み価値ありです。
そして、「ナラティブ」という視点で読むと、どちらもナラティブにとらわれた人間の悲劇と見えるのです。
確かに、本書を読む限りどう考えてもイスラエルはやり過ぎです。
ここまでの「ガザ」の事実をわたしは知りませんでした。
しかし、もしかするとイスラエルの事実もあるのかもしれない。
そういう読後感をもちました。
本書は緊急で出版したのかもしれませんが、少し情報が足りない。
そういう判断保留の考えがもたげる1冊ではあるのですが、「ガザ」の事実を知るにはいい本です。
やはり価値ある1冊だと思います。
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