1 本作の概要
池井戸潤さんのドタバタコメディ「民王」の2作目です。
![民王 シベリアの陰謀(2) [ 池井戸 潤 ] 民王 シベリアの陰謀(2) [ 池井戸 潤 ]](https://thumbnail.image.rakuten.co.jp/@0_mall/book/cabinet/7170/9784041117170_1_5.jpg?_ex=128x128)
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今回はウイルス騒動が題材でした。
今も続いているこのパンデミックを取り上げているのです。
勇気がありますね。
1つまちがえると批判の山なのに。
現在の落ち着いている状況だから小説になったのかな。
今回も武藤泰山総理と息子の翔さん中心のドタバタでした。
他の池井戸作品に比べると、かなりコメディよりの作品です。
それでも、筒井康隆ぐらいハチャメチャにならないのが池井戸さんらしいです。
2 現実のコメディ
本作の様々な出来事が現実のコロナ対応のコメディになっています。
完全なドタバタじゃなくて社会風刺が入っているところが池井戸作品っぽいですね。
例えば、こんなところにそれを感じました。
緊急事態宣言を出すとか出さないとか。
都知事と政府の軋轢とか。
ワクチンの開発の遅れとか
わたしがおもしろかったのは、レインボーブリッジの色を変えることへのツッコミでしたね。
都知事が目玉政策として出したんですけどね。
それを世論は好意的に受け止めているというところまで書いています。
皮肉だなあ。
本心は、意味ないと思ってたんでしょうね。
ちなみにわたしもです。
まあ、都民でも府民でもないので、まったくどうでもよかったですけど。
まさにポピュリズム。
でも、ポピュリストって現実の政治家に言うと名誉毀損になりかねないし、その支持者の不興をかうから使えない言葉ですもんね。
もうすぐコロナも終わります。
そうしたら、みんなどう思うのかなあ?
そういうことも考えさせられました。
3 陰謀論
こういうことが信じられているという話でした。
政府が真実を隠している。
ウイルスは兵器である。
密かに人体実験をしているのだ。
こんな感じの主張です。
こういうのってバカバカしいのが大多数なんですが、不思議とこれにひかれる人って多いんですよね。
現実社会でもよく取り上げられます。
娯楽としてテレビも番組にするし、書籍を出せばベストセラーになったりもする。
まあ、どちらも時代とともに流され消えていくんですけど。
今回はウイルスに感染すると感情が高ぶりやすくなるみたいな話にしてましたが、コロナでもけっこう出てましたね。
ワクチン打つとどうのこうのみたいなやつです。
さすがに大衆を悪くいえないからウイルスのせいにしてましたが、こういう風に世の中を認識する人は一定数います。
それが人間社会でそれを相手にするのが政治なんでしょうけれども。
4 総評
1作目は人格が入れ替わる兵器が題材でした。
これはSFっぽいというか、荒唐無稽な設定でした。
それはそれで、政治を題材にコメディを書こうとしたのでしょう。
2作目も雰囲気は同じなんですが、現実のウイルス騒動を題材にしているので、社会批評としておもしろかったです。
池井戸さんはふざけきれないというところがあるので、完全なドタバタ劇は楽しくないと思うのです。
こういう社会風刺が入って、前向きな社会へのメッセージを感じ取れるものの方がいいと思うんです。
そういう意味で、この2作目の方が1作目よりも楽しめました。
コロナが終息しつつある今、読むと楽しめると思います。