どうもすべからく本の題名というものは,自分が属するジャンルをそこはかとなく表すもののようですね。
学術書は,内容に見合った端的な題名が付けられています。
小説・文芸は,どこか思わせぶりな題名が多いようです。
そして実用書は,とにかく目立って手にとってもらえるような題名が多いようです。
今回私が手に取った本の題名は「思った通りに生きられる77のヒント」です。
人生が思うようにいかない人へ向けての本ということでしょう。
正に実用書といった感じの題名です。
筆者はTA(交流)心理学を学び,カウンセリングを行っている方でした。
この本は,筆者の専門性をベースとして,生き方というかストレスへの対処法や人との接し方についてのヒントが述べられています。
本書で印象に残ったことや感想を述べていきたいと思います。
印象に残ったことの一つ目は,人をタイプに分けてとらえるという主張です。
このタイプの俗なものに血液型によるタイプがありますが,心理学者は非科学的と血液型タイプを毛嫌いしています。
その一方で心理学には,それこそクレッチマー気質類型の昔から様々なものがありました。
ですが統計的に妥当と考えられたものは少なく,他人を見るときの手掛かりやきっかけとして用いることができるくらいの扱いだったと思います。
どんなタイプを設定しても,典型的なタイプという人はいませんので。
さてTA(交流)心理学では,次の三つのタイプを設定しているとのことでした。
1 ペアレントタイプ
子供に対する親のように権威をもって相手に接するタイプ。「力によって成功しようとする人」。
2 チャイルドタイプ
相手に構ってもらいたい,愛されたいタイプ。「魅力によって成功しようとする人」
3 アダルトタイプ
目的のために冷静に判断し,現実的に接するタイプ。「頭を使って成功しようとする人」
これらは長寿と繁栄という人生の目的を達成する手段によって分けられるとのことでした。
相手がどのタイプか,あるいはどのタイプの要素を多く持っているかを考えて接するとうまくいくと筆者は述べます。
また,自分がどのタイプかを知ると,問題への対処がはっきりしてくるのだそうです。
もとになっているのはバーンの交流分析だと思いますが,分かりやすくするためなのか,少し単純化しているようです。
どうもタイプによる人間理解というのを素直に受け入れられないのですが,人への接し方で,権威,情緒,論理のどれかを好むという人は確かにいそうです。
まあでも,下へは権威的,上へは情緒的なんていう会社員がよくドラマに出てきますから,複合的というか使い分けみたいな人もいそうではあります。
まあ,自分や他人を理解するための一つの視点としては使えるように思いました。
印象に残った二つ目は,我慢は自己虐待という主張です。
筆者は我慢からストレスが始まるといいます。
そして,無意識に我慢を続けることで心身の健康を害していくことになると。
自分が我慢していることを自覚しているうちはいいけれでも,我慢をしていることに気づかないと大変なことになるといいます。
筆者は,自己虐待は諸悪の根源というセンセーショナルな述べ方までしています。
強すぎる言い方だと思いましたが,確かに我慢し続けることはいいことではありません。
かといってまったく我慢しない生活はありえないでしょう。
我慢を自覚することが心の健康にとって大切だと思いますし,我慢しすぎないことが必要だと思いました。
三つ目は,問題の整理の仕方です。
筆者は,まず問題を事実と気持ちに分けることが大切だといいます。
そして,事実の問題であれば具体的な解決策を考えます。
気持ちの問題であれば,カウンセリング的な相談をしてみたりします。
解決の選択肢を選ぶ際には,これからの生活を「広げる」「楽しくする」「すっきりする」ものを選ぶようにするとよいとのこと。
この部分は,なるほどなあと納得しました。
この本は77ものヒントが載っているので,その人に合うものもあるし,正直合わないものもあると思います。
なので自分に合うものがあったらいいなぐらいの軽い気持ちで読んでみるのがいいと思いました。
私としては,本書は実用書なので仕方がないのですが,もう少しそれぞれのヒントの心理学的背景が述べられていたらよかったなあと思いました。
そうであれば,より理解が深まったと思います。