1 本書の概要
外国の支援体験記です。
発展途上国支援といえば、NPOとか青年海外協力隊とかJICAとかそういうのが想起されます。
本書を読む限り、そういうものではないらしいです。
海外生活に憧れる青年が知人の紹介でネパールに渡り、小学校をつくるという話です。
しかも、青年は鍼灸師です。
珍しい人生といえますね。
中村哲さんのインタビューを読んだことから、途上国支援に興味を持って読んだのですが、なかなか考えさせられる内容でした。
2 ネパールの現実
まず青年吉岡さんが語るネパールというのが、なかなか強烈です。
一言で表せば、貧乏。
そして差別。
鍼灸師として活動を始めるのですが、病院に行けない人たちが口コミで集まってきます。
その中で他の人から差別されている人たちがいました。
ダリット。
カーストで最底辺のクラスの人たちです。
人から優しくされた経験がないことが語られます。
ネパールは、インドと同じようなカーストがあるのです。
そして、歓迎されない女性。
女の子を産んだというだけで、家から出される女性。
そういう事例が語られます。
なぜこういうことが起きるかというと貧乏だからなんですね。
女性は嫁ぐ時に、ダウリー(持参金)を持たなければなりません。
これが結構な額らしいのです。
なので、女の子ばかり育てるとその家が貧乏になってしまう。
十分なダウリーを持ってなこないと家から出されてしまう。
こういうことが起きるのだとか。
ちょっと読むのがつらくなるくらいでした。
3 学校をつくる
この現実に対するアクションが学校をつくることでした。
鍼灸師としての活動では救えない子供たちがいたとのことです。
すばらしい。
自分の名前を書くことで感動を覚える子供。
日本では目にすることができなくなった現実です。
日本だと教員免許やらなんやらで資格のある人集めないとみたいな話になるのですが、そこは大丈夫だったようです。
それでも学校は簡単にはできません。
多くの方々の援助をいただきながらの開設です。
それでも子供たちが集まってくる。
希望なんでしょうね。
学校に行くと労働力が足りなくなる家族から不評だったりと、明治の頃の日本みたいな話も出てきます。
それでも子供たちの教育に邁進する吉岡さんたちはすばらしい。
子供たちが変わっていく様子が描写されていました。
4 総評
現地の最下層の子供たちに支援をする姿はすばらしい。
日本の海外支援って、インフラ支援とか大きいのもいろいろあるでしょうが、こういう支援が現地の役にたつのではないでしょうか。
読後、ネパール政府自身の問題も大きいとは思いましたが、王政から共和制になったばかりで安定していないようです。
また、ネパール大地震の影響もまだあるようです。
そんな中での学校の運営。
考えるだけでもたいへんですが、順調に卒業生を輩出しているようで安心しました。
途上国支援の現実、一端かもしれませんが、を知ることができただけでも、本書を読んでよかったと思いました。