1 NGOの支援
本書を人情味あふれる信用金庫繁盛記か何かと思って読み始めました。
実際はまったく違ってました。
場所はインド南部。
ベンガル湾を臨むビシャカパトナムという街です。
そこで現地の人に信用金庫を営ませるというお話です。
実は金融について詳しくなろうと思って手に取った1冊でした。
金融知識はまったく増えませんでしたが、人と仕事をする、人を動かすという点から勉強になる本でした。
読んでよかった本です。
2 頼母子講と信金
まずは、インド南部の経済状況の確認です。
初版2014年ですが、本書の事業が行われたのは2000年代です。
インドは経済発展が著しいですが、現在ほどではない時代の話ですね。
インドは国内に南北問題があります。
北が裕福で南が貧しい。
そういう関係です。
それで、日々の暮らしにもことかく貧乏な方が多い。
舞台となる街もそういうところです。
そこでは、インドならでは頼母子講がある。
10数人がお金を出し合って必要となった人に融資する。
そういう仕組みです。
ですが、相当いい加減で運営もあやしい。
そこで必要な人にほんとうに融資される仕組みを作る。
というか現地の人が作り上げるのを支援する。
そういうことを著者が始めたのです。
3 支援する側、される側
本書で何度も繰り返されるのが、支援する側と支援される側の区別です。
区別しようというのじゃありません。
これを上下関係でとらえるのをやめる、という文脈で語られるのです。
現地の貧しい人は、支援されることに慣れています。
どんな支援をしてくれるのか、という視点でNGOを見ます。
これでは、現地の発展はない。
NGOがいなくなれば元の木阿弥なわけです。
そこで、この区別をなくすというのが本書の主眼となっています。
具体的にどこからなくすの?
という話なのですが、これは意識の上からです。
おばちゃん信金を自分たちで健全運営させる。
これがNGOのゴールになります。
そこの奮闘記となるのですが、相当難しかったようですね。
倒産しないような運営に必要なこと、帳簿や会則の徹底等の必要感を持たせることが大事なのです。
つまり、自分たちが自主的に必要だと感じるようにしなければならない。
また、困ったら自分たちでなんとかしなければ、と思わせなければならない。
この辺りが難しかったようです。
自立するために自律する。
こういうことは、もう小学校からやっているんですが、身に付かない人には結局身に付かないものです。
それを身につけさせようというのだから、想像するだけでも大変です。
よくやっているなあと思いました。
4 総評
人を動かす。
こういうとカーネギーの本みたいですが、なかなか難しいことです。
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上司になると考え始める人が多いと思いますが、部下から上司でも同じでしょう。
夫婦間でもそうだと思います。
要点は自主性。
自分から動くようにしないと継続しません。
そのためには、そうすることの利点を相手の立場で考えさせることが大事です。
また、やってあげないという鋼の精神が必要です。
これは子育てでよく話されることです。
何でも先回りしてやって上げたのでは子どもは成長しない。
再チャレンジできるくらいの失敗はさせる方がよい。
こういう長い目で見ることが必要です。
効率だけを考えると、できる誰かがやった方がいいのですが、いいのはその一瞬だけ。
長い目で見れば、ずっとその誰かがやり続けなければなりません。
現状が改善することはないのです。
こういうことを本書は繰り返し、おもしろく伝えてくれます。
難点を1ついえば、本書の主人公が著者になったり「おばちゃん」になったりするので読みにくいとところがあります。
ずっと「おばちゃん」視点で書くとよかったかもなあと思いました。
しかし、一人前のNGOになる。
そういう成長記という一面も本書にはあります。
兼ねることでこういう書体になったのかなあ。
そう思いました。
ともあれ、人を動かす、人を育てる。
こういうことに関心のある方には、ぜひお薦めしたい1冊でした。