ギスカブログ

 読書しながらスモールライフ「ギスカジカ」のブログ

名月と「銀河鉄道の夜」

 中秋の名月でした。
 なんとかがんばって写真に収めました。

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 露出補正をかけるのが分からず,悪戦苦闘。
 この写真,明るすぎますね。
 失敗。
 私には,ダイヤルで動かす昔のカメラが似合っているようです。
 さて,夜空を見上げたら「銀河鉄道の夜」を思い出しました。
 不思議な,どこか忘れられないお話です。

 

1 かわいそうな主人公

 銀河鉄道の夜の主人公は,かわいそうな少年です。
 まず,家が恵まれていません。
 父は出稼ぎ,警察につかまったといううわさもあります。
 母は病弱,寝たきりのようです。
 放課後,バイトで働いています。
 自信もなさげです。
 答えが分かっていても先生の質問に答えられない。
 友達の父に思ったことを伝えられない。
 そんな主人公です。

2 変わらなかった主人公

 環境に恵まれない設定の主人公は,めずらしくありません。
 多くの場合,本人の行動でそれらは改善していく。
 目標に達しないまでも,変わっていくきざしが見える。
 または,メインとなる出来事が主人公を変えていく。
 変えるというか成長させていく。
 そんなお話が多いと思います。
 このお話のメインは,銀河鉄道による旅です。
 銀河鉄道の旅を始まる前と後の主人公を比べました。
 この主人公は,何も変わっていません。
 父が帰ってくるという話に喜ぶくらいです。
 精神的に成長した様子もありません。
 あの旅は,主人公のためではなかったのかもしれません。
 親友の名残惜しさが表れただけなのかもしれません。
 または,親友が最後の哀れみにしたプレゼントだったのかも。
 主人公は,親友の父に二人で銀河鉄道を旅したことを話しませんでした。
 自信がなかったのか,話すだけの価値を見いださなかったのか。
 理由は分かりませんが,教室で先生に答えなかった時とあまり変わらないように思えます。
 主人公にとって,銀河鉄道の旅がもつ意味はなんなのでしょう。
 私は,確かなものが読み取れませんでした。

3 「銀河鉄道の夜」とは

 この小説が人々の記憶に残るのは,なぜでしょう。
 ファンタジックな星々の世界を汽車で旅する。
 そんな設定が好まれたのでしょうか。
 名月を見上げて,その美しさに感心します。
 そして,地上の,身の回りのゴタゴタを忘れます。
 生活苦を忘れ,真善美にふれる。
 そういった瞬間の開放感がよいのかもしれません。
 主人公は,銀河鉄道で旅をしている間,自分の身の回りのことをほぼ忘れています。
 父のことも,母のことも。
 それらのことから離れられたのは,確かでしょう。
 機会があれば,宮澤賢治の研究をなさっている方の本を読みたいと思います。
 みなさんも,ぜひこの美しく不思議なお話にふれてみてください。
 主人公は,今後も変わらない人生を生きていくのだろうなあ。
 私が読後思ったことは,このことでした。

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