1 はじめに
キャプテン・フューチャーが好きだったことから推察できるでしょう。
私は,中高生の頃,SF小説ばかり読んでいました。
そのころ読んだものの中で,最近よく思い出される小説があります。
今回は,その小説について話します。
まあ,ネタバレです。
2 神林長平「抱いて熱く」
これがその小説です。
SFマガジンに載っていた短編です。
まあ,もしもの世界の恋愛小説なんです。
当時,恋愛に憧れていた私は,こんな彼女がいたらなあと思って読みました。
SFとしては,「もしも」の部分が大切ですね。
どんな「もしも」かというと。
人と接することができない世界なんです。
人と人が接すると燃え上がる。
そんな世界なんです。
あれっ。
どっかで聞いたことがあるような世界ですね。
そう。
究極のソーシャル・ディスタンスの世界なんです。
3 人は「孤立」して生きられるのか
これロードムービーというかロード小説でして,この世界を二人が旅していきます。
そして,この世界で生きる様々な人々と出会います。
全部は話しませんが,けっこう人としてどうかという生き方や,思い切り潔い生き方をする人々と出会います。
そして,大きな問いが提示されます。
人と接することができない「孤立」の状態で生きていくことできるのか。
これです。
どうでしょう。
できるという人も無理だという人もいるでしょう。
小説での結論は,無理だ,です。
まあ,恋人同士が主人公ですから,そうなるでしょう。
そして,二人は自殺を選びます。
つまり,抱き合うのです。
これが小説の題名になっているのです。
まあ,全部はいいませんが,バッドエンドにはなりません。
さて,恋人ではない人にとって先の問いの答えはどうなるでしょう。
恋人のいない中高生の私の答えは,無理だ,でした。
だって,恋人がほしかったからね。
初老の今はどうでしょうか。
まあ,考えに考えて,やっぱり無理だ,ですかね。
4 最後に
この小説「小指の先の天使」という短篇集に集録されています。
この中で,これだけがちょっと異質です。
「抱いて熱く」の中で披露された一つのアイデアがふくらんで他の小説になっているんですが,そのアイデアは私の好みではありませんでした。
なので,この本を読む時,「抱いて熱く」だけを読んでいます。
まあ,中高生の思い出に殉じているようなものです。
さて,どうでもいい話を一つ。
この小説の題名,長い間「雨ぞ降る」だと思っていました。
それで,長い間見つけられずにいたのです。
なんでこんな勘違いをしていたかというと,この号に載っていた別の小説の題名と間違えていたんですね。
記憶力のない男だと,つくづく思います。