1 はじめに
私は指輪物語が大好きです。
文章として読みにくいという意見には賛成しますけどね。
独特の世界観とそこに生きる愚直な人々。
好きな要素がたっぷり入っています。
その指輪物語の中で最も読み返した本はというと,これなんです。
「追補編」
2 設定の妙
指輪物語は魅力の一つに設定の妙があります。
中つ国がどのような歴史をもっているのか。
それ自体がとても興味深く語られるのです。
トールキンは,物語を創造するよりも舞台を創造することを好んだ。
私はそんな風に感じています。
とにかく細かく長い設定がてんこ盛りです。
3 王たち,統治者たちの年代記
追補編の歴史の部分で最も好きなところです。
この部分は,ドゥネダインの祖先であるヌメノールの歴史から述べ始まります。
ヌメノールの歴史自体は,それほどおもしろいものではありません。
栄光と没落です。
ちょっと昔話にもありそうなくらい典型的な話です。
でも,ここからアラゴルンの話が始まると思えば,思いもひとしおです。
ヌメノール没落後,アラゴルンの先祖は中つ国に渡り2つの王国を作ります。
一つが指輪物語にも出てくるゴンドール。
もう一つがアラゴルンの直接の先祖であるアルノールです。
これもまた長い歴史です。
指輪物語に結末には,フロドの話とは別にこういう長い歴史の終着点の意味もある。
そういう壮大さも魅力の一つと思います。
しかしちょっと立ち止まって考えると,この王たち,統治者たちの年代記とほぼ同じ時間をエルロンドさんが生きているということに気づき,また驚きます。
エルロンドさん,ヌメノールの発展と没落よりも人生が長いんですね。
そこまで考えて,ガラドリエルの奥方はもっと長く生きていることに気づきました。
この年代記以前の長い歴史の体験者であるわけです。
サウロンの親玉であるモルゴスを実際に知っている。
もうびっくり。
エルフは不死である。
そう概念としては知っていても,実際の登場人物がそうであると驚きますね。
この王たち,統治者たちの年代記は,とにかく想像力を刺激します。
そういう意味でとてもおもしろい読み物です。
4 固有名詞便覧
追補編の最後に,用語集のような固有名詞便覧が載っています。
おまけというには,長すぎるくらいに。
さて,この便覧を読むと知らないことがいっぱい書いてあっておもしろいです。
例えば,主人公フロドについてこう書いてあります。
「語学の達人」
物語中で,この能力を生かした場面ってありましたっけ。
こういう設定を知っておもしろがるのが,この便覧の正しい使い方なのかも知れません。
決して,元々の物語で分からないことを参照するためだけに存在するのではないと思います。
5 最後に
指輪物語は,ほんとうにおもしろいです。
ただ,読んだ方は分かると思いますが,あらすじを追っていくだけでは,そのおもしろさを十分には味わえないと思います。
指輪の結末は,ああでしたしね。
こんな世界があったんだ,こんな歴史があったんだ。
そういう楽しみ方をするお話ではないかと思います。
まあ,楽しみ方は人それぞれなので,読み方を押しつけるつもりは毛頭ございませんが。