ギスカブログ

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書評「友達ができにくい子どもたち」

1 友達ができにくい子どもの割合

私も引っ込み思案だし、人見知りするし、友達できにくいよ。

という感想を持たれるかもしれませんが、本書はそういう人付き合いのハウツー本ではありません。

発達の観点から、友達ができにくい子どもとその対応策を述べた本です。

古い調査になりますが、平成8年に都内17の保育園に友達ができにくい子どもがいるかと調査したところ、約4.8%の子どもが該当するとの回答を得たそうです。

20人に1人くらいでしょうか。

これは障害を持つ子どもを含めない数値だそうです。

平成8年だと、いわゆるADHDASDなど軽度発達障害は含まれているような気がしますけれども。

「友達ができにくい」というのは、発達や発育を見る上で、大きな視点になるようです。

2 大丈夫なタイプとそうではないタイプ

本書では、友達ができにくい子どもを7つのタイプに分けています。

この7つですが、さらに大ざっぱにわけると、大丈夫なタイプとそうではないタイプにわかれます。

大丈夫って、何が大丈夫なの?

という当然の疑問がわくでしょう。

この場合の大丈夫とは、相応の支援をしなくとも社会的に生活できるようになるという意味です。

つまり、そうではないタイプには、大人になった時に適切な社会生活を送ったり人付き合いをしたりするためには、支援が必要なタイプということになります。

大丈夫とは、このようなタイプです。

「ひとり遊び好き」「引っ込み思案」「ちょっとわがまま、ちょっと乱暴」タイプ。

これらの子どもたちは、性格特性からくるもので成長とともにその子のスタイルで人とかかわっていけるようになるそうです。

そして、そうではないとは、このようなタイプです。

「多動」「寡動」「発達の遅れ」「自閉症アスペルガー症候群およびその周辺」タイプ。

端的にいえば、発達障害に分類される子どもたちです。

「多動」「寡動」はADHD、「発達の遅れ」はSLD、「自閉症アスペルガー症候群およびその周辺」はASDでしょう。

これらの子どもたちには、その子に応じた支援、つまりは療育が必要ということです。

3 それぞれの支援方法

本書では、社会性を育むトレーニングとゲームによる友達づくりという2つの方法が述べられています。

社会性を育むトレーニングでは、指さしたもの見るから始まり、自己紹介、表情当て、気持ちの伝え方、ロールプレイングで人の気持ちを知る、などの方法が紹介されています。

実際、ここまでスモールステップで丁寧に支援しなければいけないのか、と感じる部分もあります。

しかし、対象の子どもは必要性を感じていなくとも、身についてないと社会生活上の不利になるものばかりですから、丁寧に支援していかなければならないのでしょう。

そうなんです。

この子どもたちには、これらの人付き合いの基本的なしぐさというものは、必要性がわからないものなのです。

なので、形から入るという部分も大切になってくるのでしょう。

ゲームでの友達づくりなどは、それがもっとはっきりしたものですね。

そもそも友達と遊ぶこと自体が楽しいはずなのです。

しかし、そこに楽しさが見つからないために、ゲームという別の楽しみを持ってきて付き合い方の実地体験をする。

こういうことが必要になってくるのですね。

本書の具体的な手法は、こういう子どもを支援している家族、教育関係者にはとても参考になると思います。

5 総評

本書は初版が1996年で、四半世紀も前の本ですが、現在でも十分参考になる本だと思います。

友達という切り口から、社会性の発達を見取るということは重要だと思いました。

また、早期に支援・療育を始めることで、その子が社会的に不利な状態から抜け出せるようになるんだとも感じました。

こういうことがもっと広まり、常識になればと思います。