カウンセリングは心理学と関係が深いです。
そのためカウンセリングに詳しくなろうとすると心理学の書籍を読まなくてはなりません。
今回は,カウンセリングと心理学のついて概論的に説明している本を紹介します。
国分康孝さんの「カウンセリング心理学」です。
1 カウンセリング心理学の歴史
フロイトを心理学の祖と説明された時期がありました。
そのため,カウンセリングや心療行為が心理学の始まりととらえられたこともあります。
しかし,これらは誤りです。
現在,密接な関係があるとしてもフロイトの精神分析と心理学は区別されています。
では,カウンセリング心理学はどのように始まったのでしょう。
カウンセリング心理学はカウンセリングから始まりました。
アメリカでのことです。
カウンセリングが調査をするにあたり心理学の方法を用いることが必要なり,ドッキングしたようです。
似た分野として,臨床心理学がありました。
日本では,カウンセラーを臨床心理士が務めることが多いため,両者を同じように扱っています。 しかし,両者は扱う対象が異なるのです。
臨床心理学が病んでいる方を対象にするのに対して,カウンセリング心理学は正常な方を対象にするとのこと。
この辺りは,アメリカの議論なので現在に日本には当てはまらないかもしれません。
いずれにせよ,このようにして新しい心理学の分野としてカウンセリング心理学が始まったようです。
2 カウンセリング心理学の実践法
本書にカウンセリング心理学が扱う集団を対象した実践には,四つの領域があります。
職場,教育,家庭,社会生活です。
職場や教育については,上司や教師として部下や子どもとどう接するかについて述べられていました。
家庭では夫婦生活での関わり方,社会人として関わり方でした。
興味深かったのは,社会人としてかかわり方で,人を審かないということとギブ・アンド・テイクで接するというところです。
そうすることで人間関係を構築することができるとのこと。
なるほどなあと感心しました。
しかし,これらはそれぞれの領域で人づきあいを実践する方法です。
それはそれで大切なのですが,カウンセリングではありません。
カウンセリング心理学を踏まえたカウンセリングの実践について知りたかったなあ。
そう感じました。
3 カウンセリング心理学を学ぶ
カウンセリング心理学には,八つの領域があること。それぞれを学ぶ際の留意点が述べられていました。
カウンセリング理論
カウンセリング技法
社会・文化的視点
アセスメント(現状把握)
キャリア・カウンセリング(進路相談)の理論
カウンセリングの哲学
カウンセリング研究法(リサーチ)
職業倫理
これが八つの領域です。
そこで述べられていることは概略過ぎて,ここでまとめるのは難しいです。
例えば,カウンセリング理論では,精神分析理論,行動理論,来談者中心療法等々の理論があり,それぞれを比較しながら学ぶとよい,とあります。
まあ,概観できるようにしたので,ここから先は専門書を紐解きなさい,とこういうことなんでしょう。
私はロジャーズに関心があるので,そちらを調べてみたいと思いました。
4 どんな人に向いた本か
この本は新書なので,ほんとうにカウンセリング心理学を概観するための本です。
しかし,参考図書などもその都度紹介しているので,初心者にはありがたいと思います。
カウンセリング心理学が成り立ちも分かるので,どんな学問なのかが理解しやすいと思いました。
まとめるとこうなるでしょう。
カウンセリング心理学について,全体像をつかみたい人に向いた本。
ただ日本のカウンセリングは臨床心理学の影響も大きいので,機会があればそちらにも目を通すとよいと思います。
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